元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1617回
トキメキとは「恋」である

「スローヘルス研究会」の新年会で行われた、
帯津良一先生の年頭特別講演の
演題=いのちの時代!心のトキメキ!=
「人生の旅情を大切にしよう」という話の続きです。

 *

“伊那谷の老子“加島さんは
「トキメキとは女性に恋をすることだ」というのです(爆笑)。
加島さんは、いま83歳ですよ。
80歳の恋といえば、
詩人のゲーテが八十歳過ぎて
20歳ぐらいの女性に恋をしています。
また、私が一生懸命やっている
ホメオパシー医学の祖といわれる
サミュエル・ハーネマン(1755~1843)が
80歳で結婚していいます。

そのハーネマンが医療活動をした、
ドイツのケーテンという町に行ったことがあります。
この町はハーネマンと音楽の父・バッハで有名な町です。
ここに、ハーネマンが80歳で
結婚式を挙げた教会が残っています。
80歳を超えて結婚したというのですから、
感動しました。
さぞやトキメイたことでしょうね(爆笑)。

さて、医療のトキメキの話ですが、
加島祥三さんはこういいます、
「帯津先生のいっていることは大抵、同感だが、
『生きることは悲しいことだ』
という考え方には賛成しないと。
たしかに人生は悲しさだけでないわけですから、
我々は虚空から虚空に帰る旅人ですから、
「旅情にまとわれて生きているのではないか」と
お答えしました。
このときに医療の「旅情」という言葉が
出てきたんです。
生きるということは「旅情」だと考えているんですと
申し上げたのです。

この「人生は旅情だ、医療は旅情だ」と確信したのは、
また文芸春秋の増刊号の特集「忘れえぬ恩師」
という原稿を頼まれたことがキッカケでした。
その飯沼編集長から、先生の小石川高校時代の話を
付け加えてくださいといわれたのです。

私の高校の恩師といえば、忘れえぬ人は、
小説家の小島信夫さんです。
91歳で亡くなりましたが、
当時、英語の先生で、
この授業たるや受験とは関係なしで、
自由な雰囲気でした。
サマセットモームの「コスモポリタンズ」というのを
たんたんと読んでは訳すという90分の授業でしたが、
生徒たちは居眠りもしないで聞いたのです。

どうして、あの授業が魅力的だったかと思い直して、
最近、「コスモポリタンズ」を再読しました。
モームは、1900年ころ、
船で世界中を旅していました。
「コスモポリタンズ」ですから、
故郷を捨てて異境に生きる人たちの
生き様を書いているわけです。
この主人公の生き方を読んでいるうちに、
この人たちの「人生の旅情」が
見事に描かれているからだと思ったんです。

注・「コスモポリタンズ」は、アメリカのコスモポリタン誌に
1924~29年に連載された珠玉の小品30編。
舞台はヨーロッパ、アジアの両大陸から横浜、神戸まで。
異郷に住む国際人の日常にひそむ事件を綴ったもの。


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2007年1月30日(火)

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