元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1653回
欽ちゃんの自伝―「読むトキメキ」

しみじみと、心ときめく、いい自伝を読みました。
「なんでそーなるの!―萩本欽一自伝」(日本文芸社)という、
人気コメディアン、欽ちゃんらしいタイトルの近刊本です。

最近、僕のところにも、いろいろな自伝本が送られてきます。
ちょっと前までは、
紋切り型の出世本とか、お涙頂戴本が多かったのですが、
長寿社会とは、ますます多様な生き方の時代なのでしょうね。
ちょっと、名の売れたタレントの話を聞き書きして、
人生経験の足りないライターが代筆したような本は、
まったく薄ペラで、読むに耐えないものです。

また、無名でも数奇な人生を歩んできたという人の自伝、
いや自家本、自費本にも面白そうなものがありますが、
大抵が、独りよがりの精神世界に閉じこもって、
その背景を知らない読者にとっては、
さっぱり要領を得ないものが多いので閉口します。

ま、あちこちから本が送られてくるので、
義理で読む場合もありますが、
どうも最近は、読み終わって、
「やれやれ、時間の無駄使いをしたなあ」と
悔やまれることも多いわけです。

そうした中で送られてきた、欽ちゃんの自伝は、
人生の山坂を自然体で歩んできたいかにも萩本欽一さんらしい、
半生が、文章からひたひたと伝わってくる楽しい読み物でした。

別に、僕は萩本欽一さんを
直接存じ上げているわけではありません。
本を送ってくれたのは、
前に、このコラムでも紹介したことがある僕の友人で、
集英社の役員を務めえ終えて、
いまは出版編集プロデューサーをやっている栗田正晃さん。
栗田さんは、僕が現役編集長のころは、
週刊明星という芸能週刊誌の辣腕編集長を勤めていただけあって、
有名タレントから信頼の厚い人で、
これまでに森進一さん、川中美幸さん、西村知美さんといった
人気タレントの自伝本を次々と出版しています。
中でも、欽ちゃん自伝は秀作です。

さて、欽チャンといえば、コント55号で一世を風靡し、
「裏番組をぶっとばせ!」「欽どこ」「週間欽曜日」など
数々の伝説的な高視聴率番組をつくった、
いわば稀有の国民的タレントであることはいうまでもありません。
半世紀前の浅草東洋劇場に始る若き日の修行時代、
師と仰ぐ東八郎さんとの出会いから、
最近の野球チーム「茨城ゴールデンゴールズ」結成の秘話まで、
屈託のない素顔がくまなく綴られています。

相方の坂上二郎さんと、久しぶりに会って
「机の脚を自分で切って転ぶ」というネタを話したところ、
「そのネタは一人よりも二人で組んだ方が面白くなる」
と盛り上がり
「コント55号」が誕生――、
また、コンビの名前の由来は
王貞治さんの本塁打記録にあやかった――
などなど、苦労人でありながら、天性が明るい欽ちゃんが、
「人の縁」をひとつひとつ大切にして、
大きく成長していく様子に引きこまれて、
ついつい、一緒の気持ちで読んでしまいます。
この本のタイトル通り「なんでそーなるの!」という
波乱万丈の半生が、次から次ぎへと続くわけです。

とくに、お母さん、そして奥さん、
お子さんとの絆を綴ったエピソード、
そして、40歳を期して予備校に行って勉強しなおすという、
この本の後半のエピソードは感動ものですから、読んでください。
無駄こそ人生、人生なんて自分を偽って作るものではないよ・・・
というメッセージが伝わってきます。
必ず、心から、いや、魂の底からしみじみとトキメキます。


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2007年3月7日(水)

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