元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1712回
「国家と神とマルクス」

まえに「40歳は、いのちの分岐点」と題して、
元気で長生きしていくためには、
40歳からは、哲学書や科学書でも、小説や随想でも
「いのちの心魂本」を読もう、
さすれば、自分の後半人生の指針が、
しなやかに力強く設計できる――、
とくに、夭折した天才のものより、
長命の作家や思想家、科学者が残した、
40歳以降の作品がよろしい――、
といった、「40歳からの魂進化論」、
「40歳から読書のすすめ」について書いたことがあります。

そんなころに、
僕の仲良くしている斉藤則教さんという編集長から、
「ちょっと目からウロコの国家論の本を作りました」と
「国家と神とマルクス―」(佐藤優・著 太陽企画出版)
という新刊書が送られてきました。
ちなみに、斎藤さんは「直径80ミリという巨大動脈瘤」
の手術を受けて奇跡的に生還した人で、
この一部始終は
「いのちの手帖」第3号に寄稿していただいたので
読んだ人もいるでしょうが、
あれから1年、
元気に活躍されていることはとても嬉しい限りです。

ところで、斉藤さんの闘病記もさることながら、送られてきた
「国家と神とマルクス」は、
いま日本の論壇を揺るがす刺激的な内容の本でした。
著者の佐藤優さんは元主任分析官で、
あの5年前に外務省の「ラスプーチン」とも騒がれ、
鈴木宗男さんの「ムネオ疑惑」に絡んで、
東京地検特捜部に背任と偽計業務妨害の容疑で逮捕。
判決(懲役2年6ヶ月 執行猶予4年)を不服として、
いま係争中ですから、知っている人は多いと思います。

自らが巻き込まれた事件は「国策捜査」の横暴だとして、
その内幕を告発するばかりか、
「国家の罠」「自壊する帝国」といった多数の著書を出版。
バルト神学、キェルケゴール、マルクスから、
はたまた北畠親房、大川周明まで、
自らが蓄積してきた知的財産と、
持ち前の強靭な精神力を駆使して、
博覧強記ともいうべきエネルギーで、
「国家の意思とは何か?」――、
ずばり、揺れ動く日本の心臓部に
鋭利なメスをいれたわけですから、
間違いなく、いま論壇を席巻しつつあるといってもよいでしょう。
本書の目次は以下のようです。

1・それでもわたしは闘う
2・国家の意思とは何か
3・わたしは何を読んできたか
4・日本の歴史を取り戻せ
5・国家という名の妖怪
6・絶対的なもの

ただ、佐藤さんのライフワークとする
国家論という思想のジャンルや係争スキャンダルについては、
専門分野ではありませんし、
すでに僕は週刊誌の世界から足を洗った身ですので省きますが、
とくに、3章「わたしは何を読んできたか」と
6章「絶対的なもの」に興味をいだきました。
強靭な精神性を放つ著者のエネルギーの秘密がわかるだけでなく、
僕の持論である「40歳からの読書のすすめ」に参考になる話が
たくさんつまっているとエンパシーしたからだと思います。
佐藤優さんは桁外れの読書家、いわば“猛読家”なのです。
とくに、東京拘置所に置かれた512日間に、
聖書、神学、哲学から歴史書まで、
内外の難解な学究書を
250冊余り読破した件(くだり)は圧巻です。
新国家システム云々というと、
ともすれば、偏狭なナショナリズムや
ファナティック(狂信的)で
煽動的な論調に惑わされるものですが、
地勢学的な身土性というか、
いや、僕たちの血肉に流れる「身魂性」を乗り超えて、
トポロジカル(位相幾何学的)な地球場に
複存する大いなる「精神性」を認める――、
これまでの日本の論客には稀な
本書のホリスティックな(全的な)視座には共鳴しました。
キリスト教の神学も勉強したインテリジェンスである佐藤優さんが
いまの論壇から注目される所以がここにあると僕は思います。
内容に興味のある人は、ぜひ、本書を一気に読んでみてください。

ともあれ、佐藤優さんの博覧強記には驚くしかありません。
というわけで、本書の「読解力のすすめ」については、
明日、触れましょう。


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2007年5月5日(土)

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