元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1713回
ラスプーチン流「読書法のすすめ」

僕の仲良くしている斉藤則教さんという編集長から、
「ちょっと目からウロコの国家論の本を作りました」と
「国家と神とマルクス―」
(佐藤優・著 太陽企画出版)という本が送られてきた――、

マルクスから、バルト神学から、
はたまた、北畠親房、大川周明まで、
自らが蓄積してきた知的財産と、
持ち前の強靭な精神力を駆使して、
博覧強記ともいうべきエネルギーで、
「国家の意思とは何か?」――、
ずばり、揺れ動く日本の心臓部に
鋭利なメスをいれたわけだから痛快な本だ――、

ただ、本書の面白さは、
ユニークな「国家論」そのものだけでなく、
著者の桁はずれの読書力にある。その強靭な精神性を支える
“佐藤優という「いのち」”のエネルギーの秘密が
隈なく明かされているところが面白い――、
とくに、東京拘置所に置かれた512日間に、
聖書、神学、哲学から歴史書まで、
内外の難解な学究書を
250冊余り読破した件(くだり)は圧巻だ――、
と紹介しつつ、
「国家と神とマルクス」について感想を書いてきました。

佐藤優さんの博覧強記には驚くしかありません。
僕の持論である「40歳からの読書のすすめ」に参考になる話が
たくさんつまっていると思いますので、
その「博覧強記!読解力のすすめ」について話を続けましょう。

本書・第3章「わたしは何を読んできたか」に、
佐藤さんの個性・知性形成に、痛烈なインパクトを与えたという、
いくつかの書物と著者のことが書かれています。
大学時代から外交官、そして獄中まで、いろいろあげていますが、
「文学にグローバリゼーション対抗できる力はない」とする
柄谷行人さんとその著作「近代文学の終わり」――、
また、ふたりのカールこと、カール・バルトの「教会教義学」と
カール・マルクスの「資本論」を
矛盾なく自らの知的財産とさせた、
経済学者・宇野弘蔵さんの「経済原論」――、
そして、国賊扱いされた
自らの境遇も“癒した”という弁証法の本、
長谷川宏さんの「歴史哲学講義」――、と次々と読破し、
血肉、いや“智肉化”したことが、
佐藤さんという個性の源のようなのです。

まあ、職業柄とはいえ、
よくぞ、ここまで難解な本を読破するものだと
呆れる人もいるかも知れませんが、ひとたび、国政を論じたり、
国家像に論陣をはる覚悟を持つものならば、
こうしたホリスティック(全的)な読解法は、
当たり前だといわんばかりなのです。
情報過多社会では、
ナポレオンもどきの芸能タレント(ボナパルティスト)が
政財界、学界、メディア界に跋扈していますから、
著者が、論壇から注目されたことは、
当たり前なのかもしれません。

さて、タイミングよくというか、
週刊誌の「アエラ」4月23日号が、
「佐藤優という罠」という特集を組み、
その後半に「ラスプーチン流 情報の捌き方」という、
読書法のすすめを明かしていましたので
参考までに紹介しておきましょう。
「1冊目の基本書を丁寧に読み終えた後、
残りの2冊の基本書を、読み飛ばしする。(略)
1冊目の基本書にはでていないが、
重要と思われる内容(略)は線で囲む。
この作業に5時間くらいかける。
これで全体で18〜20時間消費されるので、
あと残りの時間については、
基本書で得た情報や知識を記憶に定着させる」として、
情報の捌き方で、
最終的に重要なのは「記憶力」であると強調しています。

丸暗記教育は悪くないとして、
「すべての道は暗記に繋がる」というのが
強固な知性を磨き上げる秘訣だというわけです。
どうでしょうか? 
みなさんにも思い当たるところがあると思いませんか?
ちなみに、いま人気の脳科学者・茂木健一郎さんも
「ひらめき脳」という本で、
「ひらめきや創造性と、記憶のメカニズムは密接に関連している。
創造性は側頭葉(記憶のアーカイブ)と
前頭葉(意欲や指令)のキャッチボールの中で生まれる」
として記憶の重要性を説いています。

「身・魂・心」のエネルギーを複層的に高めることが、
多元的思考から絶対的精神世界までを貫く、
創造的パワーではないか?
本書をひとつのホリスティック(全的)な読み物として
読ませてもらいました。
興味のある方は、一気に読解してみましょう。


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2007年5月6日(日)

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