元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1764回
がん対策計画案は「絵に描いた餅」?

遅まきながら、厚生労働省は、この4月に施行された
がん対策基本法に基づく、
初の基本計画案をまとめたようです。

「75歳未満のがん死亡率を10年以内に20%減らす」
「患者・家族の苦痛を軽減して生活の質を上げる」
「全国どこでも一定水準の治療を受けられる」
「がん診療連携拠点病院を全国に360以上設け、
外科手術に加えて放射線療法や抗がん剤による
化学療法もできるよう整備」
「モルヒネなど医療用麻薬で
痛みを和らげる緩和ケアも普及させる」
「乳がんや大腸がんで現在20%前後の検診受診率を
5年以内に50%以上にする」
「たばこ対策については喫煙率を半減する」・・・、
どれもこれも、いいこと尽くめの項目です。
新聞記事などをまとめて見ると、
それなりに結構なお題目が書き連ねられているわけですが、
具体的な施策や実際の数値目標はといいますと、
どうも不透明なところが多いのが気になります。

現実の病院では「3時間待ち、3分間治療」をくらい、
やっとガン病棟に入院しても「検査漬け」「薬漬け」の果てに、
「医療ミス」や「院内感染」そして
「副作用」「後遺症」の脅威にさらされる――、
全国で必死に闘っている300万人のガン患者にしてみれば、
ホンマかいな?と、この基本計画案を凝視したことでしょう。

僕たち患者としては、政府の医療財政の思惑や
業者、病院の都合、また「絵に描いた餅」といいますか、
厚労省の小役人による小手先の
「ガン基本計画作文」に終わってしまうのではないか?
この「年金不払い」「介護料ネコババ」「貧乏人は死ね」・・・
といわんばかりの医療制度の欠陥が蔓延するときには、
とくに、こうした「総花式の施策」には目を凝らして
ウラに潜む思惑を見抜いておくことが大切です。

と、考えているときに、このコラムでまえに紹介した
話題書「患者漂流―もうあなたは病気になれない」
の著者・中野次郎医師から、
ある医療雑誌に掲載されたエッセイのコピーが送られてきて、
日本で行われているガン治療制度が、いかに遅れているか?
ガン医療改善に必要なのは、
「現実の病院と医師のチームワークにあり」
という辛口の提案がなされていましたので、
その内容を、ちょっと紹介したいと思います。

ちなみに、中野医師は、
元オクラホマ大学教授、長年米国で治療を続け、
1995年から神戸の外国人専門外来の病院に務めておられます。
この新刊では、
「貧乏人は病院にかかれない」
「地方の人は病院にかかれない」
「高齢者やリハビリ患者は長期入院ができない」
この少子高齢化、さらに医療費財政の悪化による
医療制度改革で長期の入院や治療が打ち切られる――、
医療過誤、院内感染は蔓延する――、
こうした「患者漂流」化現象と、
日本の医療制度の根本的な後進性が、
手厳しく指摘されていますが、
こんど送られてきた雑誌のエッセイのタイトルは
「がん治療にはチームワークが必要」というものです。

たとえば、政府の基本計画案の要項のひとつに
「乳がんや大腸がんで現在20%前後の検診受診率を
5年以内に50%以上にする」というお題目がありますが、
そのまえに、日本の「乳がん検診=マンモグラフィ」の方法や
医師の連携・・・、
現実の「病院システム」そのものに問題が潜んでいると、
中野医師は、このエッセイで指摘しているのです。


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2007年6月26日(火)

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