元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1794回
「久病良筆」(3)

長患いをしたライターが編集した医療本は、
含蓄があって面白い、まさに「久病良医」ならぬ
「久病良筆」だ――という話の続きです。
先ごろ、優秀なライターの樋口さんは、
「ガン・アトピー・難病の治療には
西洋・東洋・心身医学の統合療法」
(松山家昌・著 飛鳥新社)という医療本を構成したのですが、
では、ご本人はどんな難病克服を体験したのか?

すでに読んだ人もいるでしょうが、
まだ読んでいない方のために、
「特集・体にいいことしてますか?
わが疾走記/名馬ディープインパクトと
どちらが長生きできるやら?」という
樋口さんの糖尿病克服のエッセイの
さらなる続きを紹介しておきましょう。

         *

病院探しの彷徨と同時に、
患者のひらめきでプール通いを始めました。
運動機能を強化すれば少しはマシになると思ったのですが、
脚が痛んで泳げない! 元スウィマーにはショックでした。
仕方なく水中歩行を2日に一度、1時間行うことにしました。
これは陸上を歩くより楽なのですが、
いまさら健康鍛錬と考えるのは少々気持ちに抵抗があるので
「競馬に通うため」と割り切りました。
医者は内科では処方がないようなので、
整形外科に回されたところ、
血流に問題があるらしいということがわかり、
K医科大学病院の心臓血管外科を紹介されました。

血管に造影剤を入れてMRI検査をしたところ、
なんと病名は「閉塞性動脈硬化症」。
大動脈下部から大腿動脈に見られる血行障害で、
高脂血症、高血圧、喫煙、糖尿病が原因の目下急増中の
メタボリックシンドロームの行き着く末というわけです。
病名が分かるまで8年かかりました。
無知なお医者さんって多いのか? 
わが身を含めて現代人のいのちの仕組みが複層化しすぎたのか?
ともあれ、直感的に始めた水中歩行は毛細血管などの
血流を活発にしていたようで、症状は悪化せず、
投薬治療を続けながらも小康を保っております。
偉い先生のように
「人間、生きがいを失ったら終わりだ」
などと御託宣は申せませんが、
いのちと同じくらい大事な?競馬を諦めていたら、
いまごろ脚が一本ないような状態で済んでいたかどうか?

つまらんことでもこだわりがあると、人生なんとかなるものです。
私の場合、それがたまたま競馬だったということです。
先日、作家の高橋三千綱さんから「馬券浪人」という
喜んでいいのか悲しむべきか
わからないような称号をいただきましたが、
これからも懲りずに、ボケ防止を大義名分にして、
競走馬と共にゴールの見えない人生を走ります。
 トレーニングは、現在通っている病院のお医者さんに
効果絶大とおだてられたりして、2日に一度を毎日にし、
中味も1時間の自由歩行を1キロ半というノルマ制に変えました。
最初はハードで1時間半くらいかかっていたのが、
半年もすると1時間未満、まるで泳げなかったのに、
いまでは300メートルくらいなら休まず泳げるようになりました。
身体機能が改善されたとかいうことではなく、
単に慣れてきたというだけのことだと思いますが、
はっきり言えるのは、酒が美味くなったということです。
運動を愉しむなどという境地ではないけれど、
時折みかける雛稀な美少女の水着姿とかに元気づけらたりで、
苦行はまだ続いております。

そういえば、
サラブレッドも水中トレーニングをするってご存知でしたか。
脚部に疾患のある馬の運動として、
あるいは気性の悪さの矯正、心肺機能の強化などに有効とされます。
サラブレッドの平均寿命は20年、
人間でいえば80歳に相当しますが、
はたして、名馬ディープインパクト(現在6歳)と、
どちらが長生きできるのでしょうか。

          *

これからも「いのちの手帖」には、ただの闘病記に止まらず、
こうした「久病良筆」の含蓄の深いエッセイがたくさん載ります。
楽しみにしてください。


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2007年7月26日(木)

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