元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1830回
「熱湯経営」に学ぶ

たとえ病気でなくても、
元気で長生き、元気で若生きするためには
「体を温める」「体にやさしい食事を続ける」
「ストレスを溜めない」――、この日刊コラムでは、いつも
温和療法=スローヘルス健康法の勧めを説いてきました。
とくに、ガンのような再起不能といわれる難病でも、
「からだを冷やさない、からだを温めること」が
蘇生の近道だということを強調してきました。
これは、人の健康ばかりか、
「大企業病」や「ゆたか病」に悩む、人間の集合体である
企業の再生の論理にも当てはまるようです。

先日、僕のジャーナリストの大先輩で、
情報企画集団・(株)知性社の社長である小石原昭さんから、
「熱湯経営」と題する新書本が送られてきました。
これは、別に小石原さんの著書ではなく、
(株)大和ハウスの会長兼CEOの樋口武男さんの自伝です。
小石原さんが編集構成に携わったものだそうです。

ともあれ、副題に「大組織病に勝つ」
“ぬるま湯”を排して奇跡のV字回復、業界トップの座に導いた
大和ハウス工業会長が公開する人間力の経営――、
というものですから、
ついつい引き込まれて一気に読んでしまいました。

版元のサイトでも、「キーワードは“熱さ”。
“ぬるま湯”に浸りきった日本で、サラリーマンや経営者は、
前向きな「やる気」を取り戻さなくてはならないと説きます。
一見、古い仕事観のようですが、実はそれが人を動かし、
人を幸せにする原点だと気づかせてくれます。
働く人に元気をくれる本です」と、喧伝していますが、
まさに、トップ自らが率先垂範し、現場主義の徹底を貫く、
数々のドラマが、手に汗するような展開で進行していきます。

ときには、会議に遅れてきた課長に往復ビンタをはり、
やる気のない支店長を
大量にリストラするといった荒治療をする反面、
たえず、社内のコミュニケーションルームで社員と団欒する・・、
いまの若手社員が読んだら
ちょっと気が臆してしまうかもしれませんが、、
やがて、樋口武男さんの心にたぎる
「熱意」ならぬ「熱湯」のエネルギーが伝わり、
ぬるま湯の企業体質を排したばかりか、1兆円企業を2兆円に。
さらに10兆円企業を目標とする
企業集団に、ひたすら邁進しているそうです。

さらなる飛躍に余念のない、
いまどき珍しいモーレツにして人情味豊かな
一人の経営者の生き様が綴られています。
病床にあった創業者との「同行二人」のエピソードを含めて、
経営者だけでなく、多くのサラリーマンに参考になる
企業再生、人間再生の実践者ならでは分からない
「知恵とノウハウ」が
ぎっしり詰まった本ですから、ぜひ読んでみてください。

とくに、最終章の「成功する人の12か条、
失敗する人の12か条」など、辣腕経営者・樋口さんを支えた
「熱湯」の経営術、
処世術をまとめたキーワード集は含蓄深く圧巻です。
少しだけ紹介すれば、以下のような金言です。
●長たる者の「4つの力」は、
「先見力」「統率力」「判断力」「人間力」――
なかでも、もっとも難しいのが「人間力」。
●「かきくけこ」の実践要諦――、
か=感動、き=興味、く=工夫、け=健康管理、こ=恋
●「あ・す・ふ・か・け・つ」
これは環境、介護も含めた、次世代の人間力経営学の長期戦略の
要諦キーワードですが、
詳しく知りたい人は本書を読んでみましょう。

こうした「熱湯経営」の要諦にしたがって、
69歳の樋口さんは自らの還暦を75歳と定め、
「年齢八掛け、精神7掛け」――52歳の若さを保って
人生を貫くそうです。
まさに、「こころを熱くたぎらせる」
「人間力で温める」とは、人間本来の「いのちの原則」です。
大企業とて「冷えてしまったら」おしまいです。


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2007年8月31日(金)

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