元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1929回
「いのち」のホームカミング

このコラムで、「死を思い、よりよく生きる 」
「いのちの力」という
帯津良一医師の2冊の本を書評したと思ったら、
こんどは『静けさに帰る』という、
現代語訳「老子」で話題の詩人・
加島祥造さんとの対談集が送られてきた――、

いまや帯津さんのニックネームは、
「週刊帯津」と名前を変えたらよいと思うほど
病院での診察に、全国を巡る講演に、猛烈に忙しい帯津医師に、
こうして対談をしたり原稿を書いたりする
時間やパワーがどこにあるのかと感心してしまった――、

ちなみに、詩人でアメリカ文学者の加島祥造さんの、
珠玉の詩集『求めない』という本が
いま驚異的ベストセラーになっているが、
この対談本でも、加島さんの「求めない」発想と、
「いのちは虚空に帰る」とする帯津医師の持論が、
微妙に心の奥深く絡み合って、これからの人間はいかに生きるか?
という命題が、じつにゆったりと解き明かされている――、

みなさんも、すでに二人の持論に共鳴している人は多いはずだが、
この本のいいところは「静けさに帰る」という題名だ。
とくに、最後の章の
「ホームカミング―大きな世界に帰る」が圧巻です。
きっと、読んだあなたの人生の「居場所」が見えてくるはずだ――
という話の続きです。

         *

【ホームカミング――大きな世界へ帰る】
帯津 (人生は)私は、悲しくて寂しいというのは、
生きてることの本質的なところだろうと思っていたのです。(略)
それだけじゃないですね。
やはりしみじみとした、
もっとポジティブな気持ちもそこに入ってくる。
孤独感に解放感に、喜びにときめき。
加島 そうそう。その向こうにあるものは何かっていうと、
「ホームカミング」なんだよ。
帯津 「ホームカミング」。
加島 「ホームカミング」。
どこか大きな世界に帰るというね。
帯津 ああ、そうですね。
いいですね、私たちは虚空に帰るんですものね。
加島 ええ、あなたがさっき、多くの人の死顔は
安らいでいると言ったように、
そこに帰るのは、大きな母のもとに戻るような気持ちかもしれない。
帯津 そう言われるとわかりますね。(略)
加島 ええ。老子の言葉に、
「水の行く先は――海
草木の行く先は――大地
いずれも静かなところだ」とあります。
「すべてのものは大いなる流れに従って定めのところに帰る」
と続くのですが、これが「ホームカミング」でしょうね
帯津 ああ、いいですねえ・・・。

    *

どうですか? 加島さんの「求めない」という発想と、
帯津さんの「虚空に帰る」という発想が、
じつにエンパシー(共鳴)して、
読む読者に、いのちのメッセージが送られていると思いませんか?

そして、僕がこの対談本を読んで一番面白かったのは、
加島さんが、最後のほうで、帯津さんに「なぜ、忙しいあなたが、
伊那谷まで来るのか?」と疑問を抱き、
「あなたは僕の中にネイチャーを
見つけに来るんじゃじゃないかと思ったの」
と問い返す箇所でした。

この本には、老子、荘子からホメオパシーまで、
いろいろ難しい話が次々と出てきますが、
最後に出てくる二人の会話のシーンを想像すると、
この対談の顔合わせの凄さや、
「静けさに帰る」というタイトルのよさが
じつにしみじみと伝わってくるなあ・・・、
と、僕もエンパシーしながら、トキメイて
読ませてもらったわけです。
これまた、冬休み必読の一冊です。


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2007年12月8日(土)

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