元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第2027回
「百年前の真実」を探る旅(2)

2月の末に、温泉保養を兼ねて
和歌山県の南紀白浜に数日間逗留していた――、
ガンを癒す、のんびり冬をすごすための
じつは、南紀白浜・保養の旅は、
百年前の「真実」を探る旅でもあった――
という話の続きです。

いまから、約100年前、
明治43年に大逆事件という
「天皇暗殺・未遂事件」が発覚しまして、
みなさんの中にも学校の教科書で事件の名前くらいは
習った覚えがあるでしょう。
当時、社会主義の天才的論客・幸徳秋水以下12名が絞首刑となり、
12名が無期懲役となった日本全島を震撼させた
近代史に残る大事件でしたが、
これが、いまの民主主義の社会から見れば、
当時の軍権政府による言論弾圧、事件でっち上げともいえる
いわば「冤罪裁判」のルーツみたいな性格を持つものでした。

人間の運命とは不思議なもので、
この事件の渦中に、僕の母方の祖父・沖野岩三郎という
大正期を風靡した流行作家がいたのです。
この祖父は、この幸徳秋水・大逆事件の起こった100年前、
南紀白浜から急行に乗って1時間ほど南に下った、
新宮という町でキリスト教の牧師をやっておりまして、
この田舎町から、
なんと祖父の盟友たち6名が大逆の嫌疑で逮捕され、
もちろん、祖父も取調べを受けたのですが、
奇跡的に逮捕を免れ、
やがて、激しい言論弾圧下の中で、
この事件の真相を長編小説「宿命」と題して
大阪朝日新聞に公表し、
文壇にデビューした
大正期の流行作家となった変わり者なのでした。

というわけで、この4月に、僕は
「大逆事件異聞―大正霊戦記―沖野岩三郎伝」という
350ページほどのノンフィクション評伝を刊行しますので、
白浜の温泉ホテルを基点として、
新宮の町や祖父の生まれ故郷を巡って、
最後の取材確認をしてきたことになります。

新宮の町には、なんども取材に出かけて、
事件の関係者の記録を保存する図書館や記念館を訪れ、
とくに新宮市立図書館の司書で、
長年、大逆事件の資料収集や執筆活動を続けておられる、
山崎泰さんにお会いしました。

山崎さんのことは、マクロビオティックの始祖、
桜沢如一が、やはり新宮の出身者で、
僕の祖父とは若き日の短歌仲間だったらしい・・・
ということでこのコラムでも紹介し、(第2004回)
情報を交換している仲ですが、新たな資料も頂いてきました。

さて、100年前の大逆事件の真相ですが、
「天皇暗殺未遂」の嫌疑をかけられ、
事件を「天下の大陰謀」とデッチあげられた26名の逮捕者は、
東京、大阪、長野、兵庫、熊本、
そして和歌山と・・・全国に渡りました。
この事件は、1000人近くの社会主義者や自由主義者が,
取り調べを受けた前代未聞の言論弾圧事件ですが、
逮捕後半年という異例の「暗黒裁判」の結果
進取の精神に燃える紀州新宮からも
名物医師の大石誠之助ら6名が逮捕連行され、
以下のような極刑を食らったのです。

・絞首刑、大石誠之助(医師) 44歳
・絞首刑、成石平四郎(雑商) 29歳
・無期懲役、高木顕明(僧侶) 47歳
・無期懲役、峰尾節堂(僧侶) 26歳
・無期懲役、成石勘三郎(薬種売買・雑貨商) 31歳
・無期懲役、崎久保誓一(農業) 26歳


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2008年3月15日(土)

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