元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第2058回
食道ガンの手術ってむごいものです

「手術をすべきだ」という医師と、
「いや手術はしたくない」と強情を張る患者が対決した
1999年4月20日の出来事を、
僕の闘病記「母はボケ、俺はガン―二世代倒病顛末記
から抜粋紹介する――
「人面癌が消えた!
奇跡の始まりか、終わりなのか」という、
希望と不安の錯綜したタイトルの章の続きです。

          *

(主治医は)「心臓や肺に転移はしていませんが、
腫瘍が小さくなったいまが
手術のチャンスです」とたたみかける。
外科医だから当然の説得だろうが、
胸の三ヶ所を切って胃袋を代替食道として
喉の下にぶら下げるという手術には、
命を縮めてまでも承服する気分には
毛頭なれなかった。

「手術は、胸を開いて食道を切除し、
リンパ節を取り除く。
さらに首を開いて喉の下に
胃を“代替食道”として接合する大手術です」
「手術で完治するとは言いませんが、
このまま退院してしまえば
七〜八ヶ月でまた腫瘍がもとに戻るでしょう」
と、もう言辞は脅迫に近かった。

「手術はいかん! どうしても手術はいかん!」――。
己は術後に起こるかも知れない肺や
大動脈の合併症の苦痛苦行をイメージして、
よし!と、腹に力を入れた。
人間、とことん切羽詰れば己にウソのつけない動物なのである。
ここまで折伏されれば、
かえって患者は腹が決まってくるものだ。
カラダを切り裂かれるのは医者ではなく己である。

「分かりました。手術をしなければ、
もう打つ手は終わったというわけでしょう。
でしたら、我儘いって申し訳ないが、
手術はやめて明日にでも退院させてください」
腹きり問答の決着は
この一言で呆気なく終わった。

患者の強情に医師は呆れ返り、
意地を張った患者もさすがに疲れ果てた。
西洋医学が勝ったか、東洋医学が効くかといった
論争などはもうどうでもよかった。
きっと両方が効いたに違いない。

       *

いやー、10年前の「手術拒否宣言」のくだりを読むと、
土壇場での「わが身の直感力」というものは
大切なものだと、つくづく感じます。
もし、あのとき、
黒縁めがねの主治医の言いなりになっていたら、
おそらく、こうしてのんびりと
HIQのコラムなど
書いていられなかったと思うからです。
『ガンの手術を断るなんて』
無謀なやつだと呆れる人もいるかも知れませんが、
なんと、同じ時期に、この主治医の執刀を受けた、
Gさんは、術後の後遺症で再発転移。
それから4回も苦しい手術を繰り返され、
4年後に憔悴して亡くなるという
悲しい事件も身近で起こりました。
ひとつの選択いかんで、
人間の運命って大きく変わるものなんですね。


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2008年4月15日(火)

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