元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第2078回
連休中はどんな本を読みましたか?

僕の母方の祖父・沖野岩三郎という人は、
タブーとされた「大逆事件」の真相を
「もっとも長く書き続けた作家」として
近代文学史に名をとどめた――、という話は、
いま発売中の拙著「大逆事件異聞=
大正霊戦記=沖野岩三郎伝」に詳しく書いたわけですが、
その思い出もあって、今年のゴールデンウイークの前半は、
祖父が晩年、暮らしていた
中軽井沢を散策しようと、ゆかりのホテルである
昔の星野温泉ホテル=
ブレストンコートホテルに滞在していました。

このホテルの敷地内には、沖野の自作
「頬白の歌」の歌碑が残されていますので、
もし、この夏にでも軽井沢方面に旅行する機会があったら、
興味のある人は立ち寄ってみてください。

物書きて 倦(う)みぬる時は 口笛に
頬白の歌を まねてみるかな

この歌を読んでいると、思想、言論が封殺され、
拷問、迫害、投獄が当たり前とされた
悪夢のような時代、そして、
愛妻・ハルとともに薄氷を踏むような苦しみの日々を乗り越えて
やっと掴んだ平穏な日々の感慨や
生涯、「魂の自由国」建設のユメを見続けた
晩年の心境がしみじみ伝わってくるものなのです。

さて、僕が書き下ろした、
祖父の自伝は、ただ「100年前のテロ事件」を
興味本位で書き綴ったものではありません。
また、ただ裁判の冤罪性、神聖天皇制の実態、
言論思想封殺の不当性を質したものでもありません。

なぜ、沖野岩三郎という牧師だけが
逮捕・捕縄されずに生き伸びたのか?――この謎解きから、
近代日本と日本人が呪縛されている、
連綿たる「魂」の特殊性について論及したものなのです。
たしかに近代日本を席巻した神聖天皇制や軍国主義は終わり、
さらに社会主義思想は終焉したといわれます。
しかし、イデオロギーや政治経済体制では、
いまなお、欧米のモノマネ主義は続き、
その宿命的ともいうべき特殊性から脱せず、
「ほんとうの自由」を掴み取ることが出来ない――、
いまだ日本と
日本人の「魂」は揺れに揺れ続けているのではないか?
そう考えて書き下ろしましたものです。
ま、興味のある人は、この本を
ゴールデンウイーク熟読の一冊に加えてください。

さて、100年前の大逆事件とは、
たしかに、今の時代からみれば想像を絶する
暗黒裁判であり、凄惨な処刑事件でありました。
以下、拙著「「大逆事件異聞=
大正霊戦記=沖野岩三郎伝」から、さわりを少し抜粋紹介します。

        *

市谷富久町の東京監獄に刑場を設けて
東京控訴院管内の死刑を執行するようになったのは
明治38年5月からのことである。
それまで死刑囚は鍛治橋監獄署に収容し、
執行は東京監獄の東北に隣接する市ケ谷台町の
市ケ谷監獄の刑場で行われた。
いま刑場跡には死刑囚たちの冥福を祈って
尺余の観音像がまつられている。
明治44年(1911年)1月24日、
衝撃の判決から1週間後である。
獄の外は思いがけない大雪だった。
幸徳秋水(伝次郎)らの絞首刑は、
摂氏3度という早朝の厳冬下であわただしく始まった。

続きはまた明日。


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2008年5月5日(月)

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