元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第2096回
大逆事件から、いまの「国策捜査」を考える

お蔭さまで、拙著
大正霊戦記―大逆事件異聞 沖野岩三郎伝」は
また各紙誌でも好意的な書評が掲載されたという話の続きです。

「週刊ポスト」(5月12日発売号)1、書評欄では、
気鋭のノンフィクション作家の岩瀬達哉さんが
「100年前の“国策捜査”を記録した作家の数奇な運命」
と題して高評してくれました。
ちなみに、岩瀬さんは、年金問題や
新聞記者クラブ制度に鋭い批判を加え、
官公庁と記者との癒着を暴く
『新聞が面白くない理由』などの著書があり
年金官僚の堕落を暴いた『年金大崩壊』では
講談社ノンフィクション賞を受賞。
なぜいま「大正霊戦記」を読むべきか?
以下、拙著「大正霊戦記―大逆事件異聞 沖野岩三郎伝」
に関する岩瀬さんの論考の抜粋――を、もう少し続けます。

          *

沖野は、幸徳秋水と親交があった関係から
自身も紀州で「7人目の共謀者」として取調べを受けている。
ところが、奇跡的に難を逃れたのち、牧師から作家に転身。
「何時捕らえられるかわからない恐怖の種を持ちながら、
数十年間事件の真相を語り続けた」。(略)
著者は、親族ゆえに保有する秘蔵資料をも駆使し、
祖父の苦難の歴史だけでなく、
その精神構造をも微に入り細をうがつ。
おかげで、通り一遍の評伝ではなく、
この「魂の伝道作家:沖野岩三郎が放った
小さな小さな魂の火種は目に見えない
『炎の大河』となって大正という
動乱の時代の底流を走っていたことを、
私たちに教えてくれる。
「この事件を忘れてはならん」
「日本の行く末がおかしくなる」
と書き続けた沖野は、
「国民の魂までの差配しようとする強権軍閥内閣」
に抵抗した作家でもあった。(略)
いまでは沖野を知る人は少ない。
しかし、本書を介し、
「国権の弾圧を受け続けた異色の作家」の魅力を
存分に知ることになろう」

      *

みなさん、どう思うでしょうか?
目に見えぬ国権弾圧とは昔の物語ではないのです。
民主化といわれる100年後のいまもどうでしょうか?
若き日には権力の横暴を批判しておきながら、
自分がその権力の座に座ってしまうと、
権力の乱用にとりつかれてしまう官僚の如何に多いものか。
ちっとも進歩の気配が見えませんね。

大昔の信じがたい事例を挙げればきりがありませんが、
たとえば、中世のフランスやイギリスでは、
社会権力の中枢となる「王」には、
“難病治し”の「手さわりのパワー」
「王の奇跡」があるとまで喧伝され、
王を頂いた権力者たちが民衆の心魂までも支配し続けたという、
信じがたい権力横暴の歴史が長い間続きました。
いまの世の中でも権力を握った官僚の中には
まるで中世そのままの、
錯覚に陥っている人たちは何処の国にもいるようです。
自由・平等の社会契約で成り立つ現代社会では
たとえ大臣・役人になったとしても、
誰しもが民衆の心魂を支配できるような
『王』にはなりえないことです。
あくまで「公僕」なのです。
ま、こうした研究については、
ヨーロッパのアナール学派の始祖、
マルク・ブロックの「王の奇跡」といった大著に
詳しく書かれています。
あまり、小難しい話はやめておきましょう。
ただ、この「個人と国家」の精神構造の大激変の今こそ、
100年前の真実を明かした拙著「大正霊戦記」の真髄を
じっくりと読んでいただきたいと願っているわけです。


1 http://www.weeklypost.com/


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2008年5月23日(金)

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