旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第101回
テロ事件の衝撃的な映像

2年前のその夜、私は自宅で単行本の執筆をしていました。
東京は台風が去った後で、秋に向かってずいぶん涼しくなって
いたような気がします。
原稿を書いていたのでテレビは観ていませんでした。
そのことを知ったのは、よく一緒に海外取材に出かける
カメラマンからの電話でした。
「緒方さん、テレビ観てる? たぶんテロだと思うんだけど、
ニューヨークの貿易センタービルに飛行機が突っ込んだみたい」
確か、そう言われてテレビのスイッチを入れたのでした。

衝撃的な映像でした。飛行機が高層ビルに突っ込むだけですから。
しかも2機も。また、別の1機はペンタゴンに突っ込み、
さらにもう1機も墜落・・・。
飛行機が破壊される瞬間の映像というのは、
ほとんど見ることができないわけですから、より鮮烈です。
何度も繰り返して映像が流されると、記憶にも強く残ります。

しかし、実はあの年、2001年は、
複数のエンジンを持つ飛行機が起こした犠牲者を伴う事故が、
第二次世界大戦後では最も少ない年のひとつでした。
単発機は特殊な飛行機で、ふだん旅行者が乗る飛行機の多くが
複数のエンジンを持つ飛行機です。ですから、この年は、
戦後、飛行機事故による犠牲者が最も少ない年だったと
言っても、まったくの間違いではないでしょう。
意外に思われる方も多いのではないでしょうか。
一度にあれだけの犠牲者を出したのに、
年間通じて見ると、その数は少ない方だった。
もちろん、人命が奪われたことは事実であり、
それは数が少ない云々の問題ではありません。

ただ、あれだけの事件があったために、
航空会社の安全性に対する意識がより高まって、
それが結果的に事故の減少につながった。
もちろん、安全点検はそれまでも行われてきたわけですが、
その意識がより高まって事故が減少した。
というのは、まんざら外れていない理屈だと思います。


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