旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第107回
文明比較論者になってしまいます

旅行で何度も海外へ行くようになると、
いやでも日本と他の国との差が見えてしまいます。
とはいえ、現地の人や現地で暮らす日本人に比べれば、
知っていることは足元にも及ばない。
そのくせ、帰りの機内で、友人や仕事のパートナーと、
「どうして日本人は道を譲らないのだろう」とか、
「東南アジアよりは譲るんじゃないか」などと、
偉そうに話をするわけです。やがてお酒が入って、
「日本のプロ野球選手はメジャーリーグの2軍だ」とか、
「でも、飯はアメリカより日本が断然うまい」などと、
どうでもいいような話に流れていくパターンが多いのですが。

さて、それでも、他の国との間にあまりに大きな差があると、
やはり何か学ぶことがあるような気がしてきます。
私が最初に行った国はフランスでしたが、フランスは、
場所も遠いですが、人々の価値観もまったく違う気がします。
私の場合、仕事でかかわることが多いのですが、
この点でいえば根本的に違うと思います。
彼らは、1つの仕事、1つの商品をなるべく高い値段で売って、
仕事の総量をなるべく減らそうとします。
それは、仕事の総量を減らせば、
それだけプライベートな時間がもてるからだと思います。
先輩の編集者がフランス人の記者と仕事をしていて、
原稿の締め切りが過ぎてしまったので、
しつこくプッシュしたところ、
「オレには家族があって、一緒に過ごすことの方が大切だったんだ」
と言われ、おまけに殴られたそうです。

殴るのはどうかと思いますが、1つの仕事、1つの商品を高くして、
仕事の総量を減らすという考え方には、ちょっと惹かれます。
働くことは美徳、とまでは言わなくても、働くことは悪くない。
ですが、すべての物(物価)が安くなって、
働いても働いても利益が出ない会社が、
今の日本には多い気がする。
私の取材している旅行業界など、その代表格ですが。
不景気なのにサービス残業が増えているとも聞きます。
少ない労働力をフルに、つまり効率よく使うのが、
最近の経営者の間でトレンドらしいですから。
それとも、よく言われるように、
単に日本にはワーカ・ホリックな人が多いのでしょうか。

余暇が増えれば、その分、出費が嵩みがちですが、
フランスには、やたらに買い物をしない文化が根付いている。
パリ郊外にユーロ・ディズニーがありますが、
アメリカや日本に比べると、お土産品は極端に売れないそうです。
そういえば、手作りのプレゼントも普通に渡されますよね。
そういう社会的、民族的な背景があってこそ、
物価を高めに安定させる経済状況も生まれてくるのですが。

他の国のことをあまり羨ましがっても仕方ないのでしょうが、
生き方や価値観のヒントとして学ぶことはありそうな気がします。


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