旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第122回
バブル、超円高を歓迎!?

ここ4、5年の間、海外旅行先としてアジアがブームになりました。
主な牽引役となったのはタイやバリ島や韓国あたりでしょうか。
ですが、今年はSARSの影響でアジアへの旅行者が減り気味です。
その3都市はかなり回復して人気が戻って来ましたが、
観光旅行でいえば、香港やシンガポール、中国、台湾などへ
行く人は、以前のようなレベルまで到達していません。
香港を拠点とする航空会社が記者会見で、
「SARSは今後も発生する可能性があるものと考える」と、
話していましたが、それは、いわゆる「風評」も含めて、
現実的に受け止めていくということだと思います。

アジアのブームが一段落すると、その他の旅行地へ行く人の割合が
高くなるわけですが、アジアばかりを向いていたせいか、
旅行会社の欧米のホテルに対する影響力が低下しているようです。
かつてのバルブ景気の時代、その後の90年代前半の「円高」時代、
ドルが安くなったことで、日本人は海外で気前よくお金を使い、
そういう客を送り込むということで旅行会社も強い影響力を持てた。
もちろん一定レベル以上のホテルへの影響力ということです。

しかし、その後しばらくは良かったのですが、
海外でお金を落とす旅行者が減るのに比例して、
旅行会社の影響力も下降線をたどっているわけです。
今でもしっかりと「上客」を送り込んでいる旅行会社はありますが、
その数が減っているのは確実なようです。
これだけ不景気が叫ばれれば、当然かも知れません。

では、日本人すべてが海外でお金を落とさなくなったのか。
そうとは限りません。旅なれてしかも十分な予算を持てる旅行者は、
当時より使い方も上手になっていることでしょう。
ただ、旅慣れれば、旅行会社を通さず個人で手配するようになる。
そうなれば、自然と旅行会社で手配する人は減るわけです。
インターネットで直接予約、クーポン会社で個人手配など、
申込み先の選択肢が増えているのも旅行会社の影響力低下に
影響を与えているようです。つまり、送り込む客数が減ると、
有利な価格で仕入れることができ難くなりますから。
当時と比べると海外に行く人は増えましたが、
格安パックの利用者だけが増えたのなら、
高水準のサービスを誇るホテルには何の関係もない。

またバブルの時代に戻そうとか、極端な円高を推奨するという声が、
今の日本で出て来ることは考えにくい。
ですが、こと海外旅行に限っていえば、
そうした時代にはメリットがあったわけです。
日本国内がどういう状況であるか、たとえバブルに踊っていても、
他の国の、しかも1つのホテルからすれば、関係ない。
気前よく泊まってくれるなら、問題ないわけです。
最近は、ホテルも個人客に対するマーケティングを
重視するよ傾向がありますから、自分が、つまり個人単位で、
ホテルを上手に使っていくしかないような気がします。


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