| 第148回 (旧暦6月6日)いま盛りのアジサイは熱冷ましの薬です
 明月院、長谷観音、そして成就院……。鎌倉にはアジサイの名所の寺院がいくつかあって、
 6月中旬から7月上旬にかけて
 多くの人がアジサイ見物に訪れます。
 アジサイは日本原産のユキノシタ科の植物で、万葉の時代からすでに「安治佐為」と呼ばれていましたが、
 「アジ」は「集」、「サイ」は「真藍」を意味し、
 「真っ青な花がたくさん集まって咲く」ことを表わしています。
 伊豆七島や関東地方南部以西の海岸部などに自生するガクアジサイを原種とし、現在目にするアジサイ類は、
 すべてこれを母種として品種改良された園芸品種であり、
 セイヨウアジサイと呼ばれるものも、
 もともとは日本から中国を経てヨーロッパに渡り、
 彼地で品種改良されたものが逆輸入によって里帰りしたものです。
 大輪のうえ、桃・紅・青・紫など色彩も変化に富むところから、
 もっぱら観賞の対象とされていますが、
 実は、このアジサイには
 ヒドランゲノール配糖体などが含まれていて、
 古くから瘧(おこり)や風邪の折の熱冷ましとして
 利用されてきたほか、初夏の新芽や若葉は食用にもなります。
 アジサイ茶の用法は、梅雨どきに花と葉を摘み採って天日乾燥し、適当な大きさに刻んで保管したものをお茶様に飲用しますが、
 瘧の場合には、1日量として乾燥花(葉)8gを300ccの水で煎じ、
 3回に分服するとヨロシイ。
 また、4月8日の潅仏会(かんぶつえ)に使われる甘茶は、ヤマアジサイの変種とされるアマチャの葉を夏季に採り、
 蒸して発酵させたものを手でもんで緑汁を取り除いてから
 乾燥保存し、これを煎じたものですが、
 この甘味成分であるフィロズルチンやイソフィロズルチンには
 サッカリの2倍の甘みがあるところから、
 糖尿病患者の天然甘味料として利用されます。
 ただし、このアマチャの野生種は現在ではほとんど見られず、
 長野県や奈良県などで細々と栽培が続けられているのが実情です。
 
           
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            | 梅雨どきに心を和ませるアジサイの花 |  |