第299回
「独立してやる仕事は自分でみつけなければならない」
邱さんの本を読んだことのある人なら、
ここで書かれているのは、
ひょっとして自分のことではないか
と思ったことがあるのではないでしょうか。
私はこれまで、なんどかそういう体験をしていますが、
最近、『四十歳からでは遅すぎる』を再読し、
似たような体験をしました。
次の邱さんの文章を読んだら、
私がそう感じた理由を推測いただけると思います。
「よく独立はしたいが、何をやったらよいか自分でもわからず、
『これからどんな仕事が有望ですか?』とたずねる人がいる。
私にとって一番苦手なのがこういう人たちである。
もちろん、その時代に合った有望な仕事はいつの時代にもある。
しかし、有望な仕事だからといって
誰にでもできるというものではない。
何十億円という投資を必要とする新規事業もあれば、
専門的な技術を必要とする新規事業もある。
ゴルフ場が有望だと思っても、
土地を手にいれるだけの資金調達力がなければ駄目だし、
人間ドックが老齢化社会にマッチした仕事であるといっても、
医者を動員する能力のない者にできる事業ではない。
それに最初にスタートする事業で
かなりの資金がかかってしまう。
お金のない者が最初に独立してやれる仕事はごく限られている。
お金のかからない仕事であることが大前提である。
しかし元手がいらないとか、
自分の手元資金の範囲内でスタートできれば
何でもよいということでもない。
うまくやれば先の見込める事業であることが大切だが、
それ以前に本人のやる気とか、能力とか、
向いているかどうかがもっと決定的である。
人が仕事より先であって、
本人が興味を持っていない仕事であったり、
本人の手にあまる仕事であったのでは、
どんな有望な仕事であっても
成功にこぎつけることはできない。
だから、人にヒントをもらって
新しい仕事が発見できるものではない。
自分がその必要を感じ、
いつも目を光らせているのでなければ
新しい仕事は見つからない。
新しいということも大切だが、
自分で見つけるということがもっと大切である。
なぜ自分でみつけなければならないかというと、
独立というものは、自分でやるものであって、
他人にやってもらうことではないからである。
また自分がその必要を感じ、
ふだんから気をつけていなければ、
どんな仕事が有望かもわかるものではない。
自分が有望だと思う仕事、
こんな仕事ならやりたいなあと思う仕事は
一つや二つではないだろう。
しかし、やりたいと考える以上は、少なくとも
自分が興味を持てる仕事であるということであり、
自分の能力と資金の範囲内で挑戦が可能ということである。
もし他人の資力や援助をあてにした仕事であれば、
それは単なる夢に過ぎず、いくら有望なものであっても、
遂に日の目を見ることはできないであろう。
だから自分で選ぶことが何よりも大切なのである。」
(『四十歳からでは遅すぎる』)
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