第1回
儲けさして!(1)

Qさんの「創業大学」に寄稿できることは光栄だ。
会社をつくるにはつくったから、ぼくもそのミチでは経験者である。
ただし事業を軌道に乗せ、会社を成長させたかというと、まだまだだ。
まだ成功してない身で、成功物語は書けっこない。
正直に言うと、「もうけ方がまだわからない」のだ。
それ方以外の部分で言うと、結構よく考え、また思いつく方だと思う。

どうして上手に儲けることができないかと、考えてみる。
どうも価値観の部分で、一回つまづいているような気もする。
自分は「儲けることはよいことだ」と心から信じているか?
「金儲けなんて悪いことだ」と思う気持ちが、どこかにあるのではないか。
学校教育がそうだったのだろうか?
そういえば、好きな先生はだいたい日教組で、しかも熱血先生だったし。

学校教育というより、生まれじゃないだろうか、とも思う。
ぼくの両親はいずれも農家の出身で、学校も中学しか行ってない。
ぼくが3才のときに、父は百姓を辞め、
札幌に出てきて運送会社の運転手になった。
小学校6年生になるまで、ぼくの家には本が2冊しかなかった。
家庭の医学と社長のエッセイで、どちらも会社から配られたものだ。
ステレオはあったがレコードはない。
父が田舎から出てきてすぐに、
保証人となって支払わされた借金のカタに得た、
かけがえのないステレオだ。
まず文化的とはいえない家庭だったが、
父も母も、考え方や行動原理は、善良な農民
そのものだった。

父も母も、正直で骨惜しみせず、感心なほどによく働く。
「めんどくさい」という言葉をまず言わない。
「健康こそが財産で、誠実に働くことこそが価値だ」と、
そんな難しい言葉は使わないだろうが、
だいたいそれふうな考え方だ。
父は、自分が苦労しなければならないのは、中学しか出ていないからだ、
と思っていたようだ。
二人とも、学校教育を信じて疑わなかった。
両親の価値観を、敬意をこめて「農民の価値観」と呼ぶことにしたい。


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