第37回
ブランドケーエイ学12: おまかせします。

あるクライアントに、慧眼の担当課長がいた。
ぼくがなにかの仕事を提案したとき、かれは提案物を前にして
「ほう・・・」と感心して、こう言った。
「これを、あなたができることは、もうわかりました。
我々がああしてくれこうしてくれと言うより、
これは、もういじらない方がいいでしょう。
これだけの提案をしてくれたら、あとはこれをすべてやるか、
やらないか、それだけです。おまかせします。
このとおりやってください」

この人の仕事は、さすがにぼくも張り切った。
結果としても、どれもかなりの品質で納品できた。
多少値切られたこともあったけれど、
まあいいかという気持ちになれた。
「おまかせします」とは、なかなか言えない言葉だ。
いったん「おまかせ」をしたけれど、後から
「やっぱりこうやってくれ、ああやってくれ」
とクチをだしたくなる。それが人情だ。

どこの会社にも「目利き」は必ずいる。
そういう人が、慧眼をいかせる適切な仕事を
担当しているとは限らない。
会社が、その人の能力を認識できてなかったり、
権限を委譲できてなかったりするのがふつうだ。
だから、ぼくの方から「まかせてください」と言うことはない。
「おまかせします」という言葉は、目利きがいて、
権限が委譲されており、
その人が覚悟を決めたときにだけ聞ける言葉であって、
非常に珍しい。
この言葉が聞けたら、その仕事は、
成功が約束されたようなものではないだろうか。

また結婚式場で、非常に業績を伸ばしている
クライアントがあったが、その会社は、ぼくのみるところ、
社長の器量を感じさせる運営をしていた。
彼は、結婚式場の運営の細部について、
自分では判断していなかった。
そういうことは「女ごころ」で判断した方がいいと考えて、
信頼のおける女性にまかせて、
もっぱら大局的な営業と組織運営だけを見ているようだった。

管理者は、仕事をコントロールしたいものだ。
彼らから勉強したことは、人にまかせて成功させる。
つまり自分をコントロールできる人のほうが器量が上だ、
ということだ。
ぼくはまだまだ、彼らの足もとにもおよばない。


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