第59回
ブランドケーエイ学22: 2分法のあいだに。

この国では「勝ち組」と「負け組」の間の存在が許されない。自転車道をゆっくり走ってみたい、と書いたら、すぐに読者の方から「がんばれ」と、はげましのメールをいただいた。ありがたいとも思い、アチャーとも思った。文章のトーンに、敗北感がただよっていたのだろうか。やっぱり、このサイトの読者はレベルが高い。ヘタなことは書けないナ。

営利会社が、前進と成長を必要条件としており、停滞はすなわち「負け」だといういうのは、それが前提の社会なんだと理解するしかない。
ナイーブな言いぐさになって申し訳ないが、新聞で会社の業績を見るときの棒グラフが、前年同月との「伸び率」比較だったりするのが、なんとなく不思議だ。この経済観では、成長ゼロの状態がニュートラルではなくって、去年と同じ伸び率であることがニュートラルなのである。

無限に続く成長というのがあるのかどうか。それ、ネズミ講みたいにどっかで行き詰まるんじゃないか? という感じもするが、そういう議論はもっと教養のある人たちに任せておこう。

話はぜんぜん変わるがときどき「2分法」の間に、何かありそうだ、と思うときがある。例をあげれば、「働く女性」の見方だ。
一昔まえだと、働く女性には2つのタイプしかない感じだった。つまりバリバリ上昇志向のキャリアウーマンか、はたまたキャピキャピの腰掛けOLか。

じっさいには、このどちらでもなく、普通に働く女性が多い。男性と対抗したり迎合するのでもなく、結婚相手を物色するために就職したわけでもない。仕事は生活のために必要なもので、なるべく働き続けたいと考えており、仕事から得られる充実感も大切なものと知っている。そういう普通の、働く女性の価値観と生活ぶりは、オヤジたちが想像するよりずっと成熟していた。

よく女性向きのマーケティングがいろいろ考え出されるわけだが、そこで想定する女性像がずれていることがある。クラブのホステスが典型的な女性ではないし、じっさいのところホステスだって、外から想像されるような典型的なホステスではないのである。


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