第81回
ブランドケーエイ学31:よいデザイン。

商品の差別化をはかるため、製品のデザインは非常に重要だ。
消費者の立場に立てば自明のことだし、商売の観点からだって四半世紀も前から言われているのことだが、きっちりとやっている会社は意外と少ない。
いまだにそうなのはなぜかというと、ひとつにデザインの評価軸が定まらないことがあるのではないだろうか。

デザインの評価は、つきつめていえば主観的とならざるを得ない。つまり好きずきだ。
では、誰の好きずきに合わせるか、ということを前に書いた。
わが社では、そのような主観的評価を「ヨコ軸」と呼んでいる。もちろんもうひとつ、タテの評価軸があるわけだ。
タテ軸こそはデザインの品質であり、ある程度客観的に見ることができる。つまり個人的に好きか嫌いかは置いても、よいデザインというものは存在する、というのがわが社の立場だ。よいデザインかどうかを考えるときの基準について、ヒントをいくつか挙げたい。

おばあちゃんの知恵に「タンスは裏を見て買え」というのがある。これは、デザインにおいても非常に重要だ。
アップルがiMacを出して以来、コンピュータもデザインの重要性が認知され、ソニーのバイオで、その流れは決定的なものとなった。いまではノートパソコンは、どちらをみても似たような「銀パソ」だらけだ。
しかし、裏側をひっくり返してみてみると、かなり違いがある。「見える部分だけ飾っておけ」というメーカーの姿勢がみえ、「デザインとは化粧、裏はコスト」と読めるものも多い。

もうひとつ、すぐれたデザインは、価値が長持ちする。
本当はプラスチックなのに、木目や金属に見せたくて化粧をしているものがある。このようなものは、使い続けることで塗装がはがれ、持っていることが恥ずかしいものになる。そうなったら捨ててくれ、といわんばかりである。
一流のデザインは、木は木、金属は金属、プラスチックはプラスチックとして、正直に素材の特徴を活かしてつくられる。使い続ければもちろん傷はつくけれども、それもひとつの味わいかなと、あきらめることができる。

日本の工業デザインの大勢は、表面はいろいろ工夫はしているが、裏までなかなか届かず、素材の誠実さとなるとぜんぜんだ。


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