第87回
カネカネカネのケーエイ学19:著作権、だれのもの?

広告の著作権は、誰のものか。これは実際には、なかなか難しい問題をふくむ。
クライアントは、金を出した以上は自由に使いたいと考える。一方で、制作者は、とうぜん著作権は、制作者の権利だと考える。しかし、そもそも「著作物」といえるだけの「創作性」があるのかどうか、あやしい部分もある。

代理店は、両者の利害がぶつかることを知っているが、積極的にそのことを調整しようとはしていない。困ったことではあるが、これはこれで、オトナの対応なのかな、という気もしている。

わが社では、設立初期からかなり意識して、著作権の権利関係を明確にしようと努めてきた。しかし、その姿勢が理解されたかというと、じっさいは誤解され、敬遠されたことの方が多かった。この経験からいうと、あいまいにしておいた方が、むしろトラブルが避けられるのである。
しかし、著作権の問題をあいまいにしておくと、次になにかしようと考えたときに、萎縮的な判断しかできない。トラブルを避けている分だけ、新しいビジネスの芽をつむことになる。

著作権の問題は、まず制度そのものの難しさだ。法文が整っていないし、現代のビジネスに対応できていない面があるので、ルールがどうなっているか、争ってみないとわからないことがある。
また、制度上どうなっているかということと、それをどのように営業に利用するか、ということは一応切り離して考えなければならない。勉強したことを鵜呑みにして、そのまま主張していたのでは、仕事を受注できず、ビジネスに負けてしまう。レベルの違う話を、一緒くたにしてしまうとややこしくなる。

著作権は、当事者の任意で決めておけることが多い。
制度はどうなっているかと、お上に正解を聞くのではなく、見積りの段階で当事者が合意できる大ワクを決めること。これが大事なことだと思う。

著作権は誰のものか。
「帰属」のレベルだけで考えると、利害がぶつかりすぎて、解決が難しい。著作物の「利用権の範囲」を適切に設定すれば、制作者とクライアントの利害を調整することができる。「帰属」と「利用権範囲」とを分けること。それが現実的解決の第1歩である。


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