第54回
ストアコンセプトづくり その2
130日前 パンのに匂いに誘われて

松井さんが考えたカフェは
ビジネスマンやOLの人達に
エネルギーを与えるセルフサービス方式のカフェが
この場所にふさわしいのではないかと云うものでした。
しかし松井さんは心の内で納得しても
役員会での発言は慎重でした。
なぜならそれだけの業態なら社長と専務に
リスクのない大手のセルフサービスカフェチェーンに
加盟した方が良いと云われるからです。

そんな時、新宿を歩いていた松井さんは
香ばしいパンの焼けるにおいにひかれ立ち止まりました。
ただの香りではありません。
バターの香りも含まれています。
その店はなんとカフェでした。
カフェでクロワッサンを焼いているのです。
思わず店内に入りぐるっと見わたすと20坪で35席位の店で
コーヒーはセルフサービスで200円、
入口の所に焼き立てのパンが並んでいます。
キッチンの奥の方で、
各種の香りの良いクロワッサンを焼いています。

こんな狭い場所で一体どうしてこんなに大量のパンを
焼くことができるのか。
松井さんは思わず店の方に聞きました。
「ここでパンを焼いているのですか?」
「そうです。今焼いているのは
ドイツから輸入されたクロワッサンで
あと3分で焼き上がります」と云って
パン屋さんのオーブンから較べたら
はるかに小型のオーブンを指さしてくれました。
しかもそのオーブンの廻りには人がだれもいないのです。

松井さんは夢中でこう云ってしまいました。
「私にこのパンの原料と焼くオーブンを分けて下さい」
その時、客席にいた一人の男の人が松井さんに声をかけました。
「始めまして、私がこのパンを輸入した村田です」
この劇的な出会いがドラマを創り出すのです。


『お互いの長所を認め合い、尊敬し合う、
それを続ける事を文化と云う』


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