第87回
店造りが始まった その2
85日前 1本の小さな穴でダムは壊れる(始めての失敗)

松井さんは設計士に仕事を依頼する際、
芝さんに相談をする機会を得る事が出来ませんでした。
理由は2つです。

1つはこれ以上、芝さんに甘える事は出来なかったからです。
松井さんは正式に芝さんに
開業までと開業後のコンサルティングの仕事を
依頼していたのですが、
まだ契約を結んでいませんでした。
2つ目はその頃、芝さんはドイツへ行っていて
日本にはいなかったのです。

コンセプトを聞いて3日後に
厨房メーカーの設計担当者は図面を持って来ました。
今はドラフターを使って鉛筆で設計図は書きません。
コンピューターで設計するのです。
コーヒーマシンはあのペンステーションと同じもので
配列も同じです。
すっかり安心した松井さん、
この厨房図面を持って
どの店舗デザイナーを起用しようかと
思いをめぐらせていました。

そして芝さんがようやくドイツから帰って来ました。
冷凍パン生地を輸入している
アナナスジャパンの村田さんと一緒に
ドイツにある工場まで視察に行っていたのです。
当初は松井さんも一緒にと
村田さんも芝さんも考えていたのですが、
松井さんのコンセプト創りが遅れていた為
一緒にはいけなかったのです。

松井さん厨房図面を芝さんに見せました。
厨房図面を見た芝さん、
松井さんに1日の来店客数、ドリンクの杯数、
フードの調理点数を
設計担当者が質問したかと尋ねました。
答えはノーです。
設計担当者はペンステーションを参考に
と云った松井さんの言葉だけで図面を作ったのです。
設計担当者に芝さんの大きな叱責の言葉がひびきます。
それは松井さん自身が叱られているかの様でした。
松井さんの小さな失敗は
あやうく店を駄目にする所だったのです。


『叱りと怒りは全く異なる
叱りは理性で怒りは感情である』


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