第95回
店造りが始まった その10
63日前 家賃を下げる 鬼専務との攻防戦

当初予算化した70000千円は
あっという間に62340千円を
消化してしまう事になりました。
店はまさしく1万円札を張ってゆくがごとし
と云いましたが
その通りの実感をひしひしと感ずる松井さんです。

この予算に基づいて、
ストアコンセプトの最終見直しと
損益分岐点、利益計画と返済計画を
銀行に提出しなければなりません。
松井さんはかつて
賃貸ビルの建設プランの企画書を書いた経験があるので
芝さんがくれた、損益分岐点や利益計画の立て方は
同じ様なフォーマットで組まれているので
エクセルで計算すれば良いと思っていました。

しかし試算の第1回目で
思いもしない事が分かりました。
40坪の店舗で坪当り30千円が
当初の経営会議で決まった家賃設定です。
実際の相場は40千円を超える一等立地です。
会社にすれば子会社ゆえに
割引いた家賃を設定してくれたのです。

しかし月に共益費を含んで1200千円の家賃は
損益分岐点売上の14%近くになります。
もし家賃が25千円で月額1000千円なら
11.5%まで低減されます。
松井さんは厳しい姿勢をくずさないあの鬼専務に
交渉しに行きました。

損益分岐点の計算式を見ていた専務は
毎月どうしてもかかる経費(固定費)に
本部費が500千円計上しているのを見つけました。
本社から借りる経費を
いきなり200千円低くして欲しいと云って
何に使うかはっきりしない未定の経費を
500千円も計上する事に対して
厳しい言葉を松井さんにあびせかけました。

「松井さんの給料は本社が負担している。
松井さんの給料を人件費に上げて、
その上で店の必要な事務、総務の経費を
本部費として計上しなさい」

松井さんの給料の一部を
本部費に上乗せしたことを
鬼専務は見破っていたのです。
第1ラウンドは松井さんの完敗です。


『企業の内に鬼と云われる人がいて
始めて企業は存続する』


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