第100回
人財をつくる その5
60日前 店は劇場 パートタイマー、アルバイトはキャスト(役者)

前回の続きです。
芝さんの話は続きます。
吉野屋のパートタイマー、
アルバイトがやめる理由のランキングは
第1位「アホな店長につかわれたくない」
第2位「評価が不公平」
第3位「職場環境が悪い」
第4位「仕事がきつい割に時給が低い」
でした。

このアンケート結果が指し示す事は
現場の店長が云っていた事と
180度くい違っていたという事です。
では、「なぜ店長がアホなのか」
と云うアンケートを行ったところ、
これ又意外な答えが返ってきました。

店長が丼(どんぶり)に入れる260gのライスには
ほとんど誤差がありません。
80g入れることが決まっている牛肉と玉葱の盛り方も
一パツで決まります。
「アホな店長につかわれたくない」と書いた人々の多くは
ホレボレする様な仕事ぶりを発揮する店長を
実に優れたワーカーと賞賛し、認めています。

しかし、店長は、
部下への仕事の与え方、教育の仕方、
やる気を出させるモチベーションの能力などが
パートタイマー、アルバイトに較べて
一段と低くなってしまうようなのです。
その点を「アホな店長」として厳しい評価をしたのです。
云い返せば、もっと教育の方法や能力の評価方法に
具体性や客観的な説得性があれば、
パートタイマー、アルバイトも
店長を「アホ」と云う事もなく
仕事を辞める事もなかったのです。

このアンケートを実施後、
吉野屋は一大改革を行います。
社員は1名で店長ですが、
パートタイマー、アルバイトでも時間帯責任者として
管理者の仕事に就いてもらい、
責任の明確化と権限を与えました。

パートタイマー、アルバイトの呼び方も改めました。
今日ディズニーランドが使っている
「キャスト」と云う名称に変更したのです。
店は劇場、演ずるのは感動と云う劇です。
働く1人1人が配役を持つ役者「キャスト」なのです。
この改革によって吉野屋はさらに大きく発展します。

芝さんの人材論を聞いて、松井さん夫妻は
厳しくやさしい経営者になると心に誓いました。


『始めて仕事に就いた時の
上司の一言で人生が変わる』


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