弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第62回
本当によいのか?裁判員制度

みなさんは、陪審制度を知っていますか?
アメリカの映画や小説によく出てくるので
ご存知かもしれません。
一般人が裁判の結論を多数決で決めるという制度です。

日本も、これに習って、
裁判員制度が導入されることとなりました。
ただし、2009年までに実施することとなるので、
今すぐにというわけではありません。

また、裁判員制度が適用される裁判は、
刑事裁判のみです。
しかも、殺人や強盗といった
比較的重い犯罪に限られます。

日本の裁判員制度は、
裁判官3人と一般人6人の多数決で
裁判の結論を決めます。
(被告人が罪を認めている場合は裁判官1人、
 一般人4人となります。)
この一般人(裁判員)は、選挙名簿から抽選で選ばれます。
だから、みなさんが裁判員になるのであって、
他人事ではありません。

裁判員制度が導入された理由は、
裁判への一般市民の参加、
即ち裁判の民主化と言われています。
健全な市民感覚を裁判に反映するとも言われています。
よほど、法律の専門家は、
法律馬鹿で一般常識がないと思われているようです。

確かに、裁判官も人間ですから、
間違っていると思われる判断をすることはあると思います。
しかし、一般市民の方が
裁判官よりも間違わないと言えるでしょうか?

将棋のあるプロ棋士が、
「アマでもプロに勝つ方はいます。
 しかし、何度も戦うような長い戦いとなると
 プロが勝つでしょう。」
という話をしていました。

同じことは、
裁判での判断でも言えるのではないでしょうか?
たくさんの裁判を一般人と
プロである裁判官が判断すれば、
裁判官の判断が正しい可能性が高いような気がします。

みなさんは、裁判官の判断よりも
一般人の判断が正しい可能性が高いと考えますか?
それとも、自分たちの代表である一般人が
判断した結論なので、
判断を誤ったとしてもやむを得ないと納得できますか?

それから、刑事裁判では、
真の犯罪者は罰しなければならない一方で、
無罪の者の人権は守られなければなりません。

裁判官は、
怪しいけれどもやっていないかもしれない
という微妙な事件では、
無罪を出して真の犯罪者を
社会に出してしまうのではないか、
逆に、無罪の者を刑務所に送ってしまうかもしれない
という2つの考え方の間で悩むわけです。

みなさんは、国民の義務として、
仕事を休んでまで、
そのような悩みを背負う覚悟はありますか?

ちなみに、僕は、法律の専門家なので、
裁判員にはなれません。


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