弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第73回
訴訟に勝つための作戦集19−
相手の証拠隠滅を防ぐ(証拠保全)

前回、相手方の持っている
自分に有利な証拠を
裁判で出させる手段があるという話をしました。

しかし、文書が破棄されてしまう、
あるいは、提出命令を受けてから、
自分に有利な書き込みをしたり、
自分に不利な部分を削除・訂正したりすること
(いわゆる「改ざん」です)も考えられます。

民事訴訟法は、
これに対する対抗策を用意しています。
これを、証拠保全と言います。

証拠保全は、裁判が始まる前に、
即ち、相手は自分が裁判を起こされるかどうか
わからない無防備な状態の時に、
証拠調べを行なう手続きです。
医療過誤訴訟で、
訴訟前にカルテなどの情報を手に入れるため、
よく使われます。

ドラマ「白い巨塔」でも、
証拠保全が使われていました。
ただ、「白い巨塔」では、
一度目は弁護士がいい加減な証拠保全の申立をしたために、
その後カルテなどが改ざんされてしまう
という結果となってしまいました。

銀行で撮影しているビデオなども、
証拠保全で訴訟の前に調べておくこともできます。
銀行などで撮影しているビデオは、
一定期間が経過すると消されてしまうからです。

証拠保全で、気をつけなければならないことは、
写し(コピー)を取ることに
相手が協力してくれないことを想定して、
カメラやコピー機を用意しなければならないということです。

証拠として残しておくためには、
文字が読める程度に
文書の写真を撮影しなければ意味がありません。

そこで、接写が可能なカメラを用意しなければなりません。
通常はプロに依頼しますが、
これが結構費用がかかります。
最近は、小型のコピー機が普及しており
それを利用するのも1つかもしれません。

ビデオの証拠保全の場合は
相手のテープの形式に合うビデオデッキを
用意することが必要となります。

証拠保全は、文書だけでなく、
病気あるいは高齢で亡くなりそうな方の証言を
事前に得ておきたいときには、
この証拠保全を利用することができます。

ただ、証言の場合は、
ビデオ撮影しておくということでも
証拠化できますので、
証拠保全までは必要ないかもしれません。


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