弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第78回
愛人や内縁の妻、息子の嫁のために

遺言が必要なケースの続きです。

3.配偶者と籍を入れていない場合

  夫婦別姓を取るために籍を入れていないケース、
  同棲しているけれども、本妻がいて、
  あるいはその他の事情で
  籍を入れていないケースでは、
  男性が亡くなった場合
  女性には相続権がありません。

  そこで、女性に対し愛情や世話になった
  という気持ちがあるのであれば
  遺言を書いて財産を残してあげましょう。

4.息子の嫁など特に財産を残してあげたい人がある場合

  相続権は、配偶者と子、(子のいない場合)両親、
  (両親もいない場合)兄弟にあります。

  息子の嫁には相続権がありません。
  自分の面倒をよく見てくれる息子の嫁など
  特に財産を残してあげたい人がいれば、
  遺言を書く必要があります。

  また、子供の中で、自分に良くしてくれた、
  あるいは体が弱いなどの事情で、
  財産を多く残してあげたい場合にも、
  遺言で配分を変えることができます。

5.会社等事業承継のある場合

  事業を子供の誰に承継させるか決めてある場合、
  承継する子に、会社の株式、
  会社経営に必要な資産を相続させる必要があります。
  遺言がないと、会社の経営権争いにより
  事業がうまく行かなくなることもあります。

6.財産が戸建しかない場合

  財産は、戸建しかないので、
  遺産分割など関係ないと言う方もいるのですが、
  これは間違いです。

  妻と子供2人が戸建を相続する場合、
  相続分は妻2分の1、
  子供A4分の1、子供B4分の1となります。

  子供Bがどうしても自分の相続分を
  現金で欲しいと言い張った場合、
  相続財産が戸建しかないとすると、
  戸建を売却して、代金を分けなければなりません。
  すると、妻は、売却代金の2分の1
  (ひどいときには譲渡所得税を引いた金額)で、
  マンション等を借りて、
  生活しなければならないということにもなりかねません。

7.本妻の子の他に愛人の子がいる場合

  本妻の子と愛人の子は、どちらも子供ですので、
  相続権はあります。
  しかし、愛人の子は、本妻の子の
  2分の1しか相続できません。
  しかも、前述のとおり、
  本妻には相続権がありますが、
  愛人には相続権がありません。

  愛人の子が未成年の場合は
  特に遺言により法定相続分よりも
  多く財産を相続させる必要があります。

  その他、公益事業に寄付したい、
  先妻の子と後妻が相続人となる、
  相続税対策をするなど、
  遺言を書いておいた方が良い場合はたくさんあります。

これまでひたすら走り続けて築き上げた事業や
財産を整理して、
自分の愛する家族のことなどを考えてみる機会を
持っても良いのではないでしょうか?


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