弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第80回
現実の証人尋問で「実は・・・」ということは

テレビドラマの刑事裁判の証人尋問では、
証人が「実は、私がやりました」
「実は嘘をついていました」と認めて、
真犯人が見つかって、
被告人が無罪となって「めでたし」「めでたし」
というところで終わります。

しかし、現実の民事裁判では、
「実は・・・」と認めるケースはありません。

裁判の証人尋問の段階で、
事実を認めるくらいであれば、
裁判の前の交渉や
お互いの主張・反論を繰り返しているときに、
事実を認めて、話し合いで解決しています。

それができずに、
証人尋問まで行く事件というのは、
少なくとも当事者の一方が
自分の主張を譲らないというケースですから、
たった1時間から2時間の証人尋問で、
「実は・・・」などと認めることはありません。

現実は、会話が録音されていたとしても、
「録音されたのは、会話の一部で、
 別な場面では別な話をしていました」と
平気で証言します。

ただ、相手や証人が
こちらに有利な事実を認めないからといって、
こちらに有利な事実が判決で
認められないわけではありません。

相手方が否定していても、
他の証拠や証言を総合して判断した結果、
事実として認められる可能性は十分あるのです。
この点が、交渉と裁判の違うところです。

交渉では、第三者が双方の言い分を聞いて、
どちらが正しいと判断してくれることはありませんから、
一方が嘘を付いていると
明らかな嘘でも解決しません。

しかし、裁判では、
相手が事実を認めず嘘を付いていても、
相手の証言や主張がおかしければ、
裁判官がこちらの言っていることを
事実だと判断してくれることとなります。

だから、相手が一般常識から考えて
明らかにおかしな嘘を言うのであれば、
こちらにとって有利になるので、
あまり気にする必要はありません。


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