弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第82回
初めての証人尋問

みなさんの中で、
裁判の経験がある方も少ないでしょうから、
証人尋問を受けたことがあるという方も少ないでしょう。

裁判が一生に一度なら、
証人尋問も一生に一度という方も多いと思います。
法廷で証言するなんて、人生、最初で最後かもしれません。
証人尋問の様子は、だいたいテレビドラマと同じです。

正面の壇上に裁判官がいて(通常は1人です)、
壇の下に証人尋問の内容を記録する書記官、
左に原告の弁護士、右に被告の弁護士、
そして、真ん中が証言をするあなたです。

後ろに傍聴席があって、
ドラマでは、いつも傍聴席がいっぱいなので、
証人尋問はたくさんの人に
見られるのでしょうかと聞かれることもあります。

しかし、普通は、運悪く
法廷見学や裁判所の研修などに当たらなければ、
傍聴人は誰もいません。

だから、傍聴人を気にせず、
証言することができます。
しかし、それでも、真面目な人ほど、
「裁判では、嘘を言っちゃいけない」
あるいは「裁判官や弁護士に説明するのだから、
普段より丁寧に説明しなければならない」
「うまく証言しなければ裁判で負けてしまう」などと
必要以上に気を使ってしまって、
緊張してしまう人がほとんどです。

役所や改まった場所は苦手で、
初めて裁判をするという人は、
裁判になったら、
裁判所見学あるいは裁判に慣れるつもりで、
裁判を見に行った方が良いかもしれません。

証人尋問だからと言って、
かしこまる必要はありません。
証人尋問の目的は、
裁判官によく説明してわかってもらうことにあります。
裁判官も普通の人間ですから、
普段、弁護士に説明しているとおりに話せば、
十分わかってもらえます。
裁判官と話すつもりで、証言すれば、
あまり緊張しないと思います。

ただ、なかなか、実際はそうは行かず、
人見知りせず、
打ち合わせではきちんと証言できそうな
中小企業の経営者でも、緊張してしまって、
よくわからないことを証言してしまうことがありました。

それでも、少し緊張しながら証言する方が
誠実に答えているという感じが出て、
証言に真実味が出てくるものです。
みなさん、証人尋問は、
初めての人が多いので、
完璧にこなす人はほとんどいません。
それに、重要な点で失敗しなければ、
その証人尋問のせいで負けるということはありません。
安心してください。


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