弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第91回
和解では法律にはない解決が図れる

裁判が和解で解決することの多い理由の続きです。 

(4)任意の履行を期待できる
   判決になって、勝った場合でも、
   相手が判決どおりに支払うわけではありません。
   すると、強制執行をしなければ
   相手からお金が取れません。
   相手に差押えすることが可能な財産があれば、
   これを差し押さえればよいのですが、
   差し押さえる財産がない場合は、
   判決をとっても紙切れになる可能性があります。

   そこで、請求額を減額する和解をして、
   相手が任意に支払をする意欲を持たせる
   という方法もあるのです。

   賃料未払いの借主に、
   今までの未払賃料を減額する代わりに、
   いつまでに任意に部屋を明け渡すようにすることも同じです。
   判決を取って、部屋の明け渡しの強制執行をすると
   かなり費用がかかります。

   そこで和解をして、
   任意に明け渡しをさせて、
   強制執行の費用を節約するのです。

(5)法律にはない解決が図れる
   法律は、完璧ではないので、
   同情すべき点があったり、
   本来法律で保護されるべきであったりするのに、
   法律の不備によって、
   判決となると負けてしまう可能性が高いケースがあります。
   そういう場合、和解で中間的な解決をしたりします。

   その他にも、契約で保証人をつけていなければ
   判決で保証人をつけることはできませんが、
   和解で支払いを分割にする代わりに
   保証人をつけてもらったり、
   担保を提供してもらったりするということができます。

   また、兄弟等の同族間で、裁判をしている場合には、
   貸し金請求の他に、土地の共有状態の解消、
   会社の経営権の争いなど、
   いくつもの争いがあることも多いです。

   このような場合、判決によると、
   一つ一つ、争って
   別々に手続きを進めて
   勝ったり負けたりしなければなりません。
   和解であれば、ここを取る代わりに
   ここを譲るというように
   柔軟に全てを一度に解決することができます。

このように、和解は、
判決による解決よりもメリットが大きい場合が多いのです。
だから、判決を求めて裁判(訴訟)を起こすのですが、
和解で解決するケースが多いのです。


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