弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第102回
控訴審での弁護士の変更

一審で、敗訴したから、
控訴審では、弁護士を変えてみるということは、
少なくありません。
僕も、実際に、
そういう依頼を受けたことはあります。

前回説明したとおり、
控訴審の弁護士報酬が
一審と控訴審で同額なのであれば、
一審で敗訴した弁護士よりも
別な弁護士の見方や主張の方法にかけてみる
というのも一つの選択だからです。

ただ、一審の弁護士が
よほどひどい弁護士でない限り、
一応の主張はしてあり、
それに対し、一審の裁判官が答えを出しているので、
控訴審で弁護士を変えたからといって、
急に、自分に有利になるということはありません。

一審で、弁護士のせいか、依頼した方のせいか、
重要な主張や証拠が抜けていた場合、
控訴審で主張したり、
証拠を提出したりすることとなります。

しかし、控訴審の裁判官は、
なぜ、そのような有利な主張を一審で主張したり、
証拠として提出したりしなかったのか
ということを問題にします。

普通の人ならば、
自分に有利な主張や証拠は、
最初に出すはずだからです。

裁判官は、
そのような有利な主張や証拠がありながら、
一審では出さなかったとは考えずに、
そのような有利な事実や証拠は
なかったと考えます。

実際に、一審で敗訴した方から、依頼を受けて、
当然、主張すべきことが主張されておらず、
その裏づけの証拠があったにもかかわらず、
証拠として提出がされていなかったので、
主張をし、その裏づけも証拠として提出しました。

控訴審の裁判官に、和解の席で、
控訴審になって初めてあのような証拠が出てくるなんて、
裁判所は信用することができませんと言われました。

ひどい弁護士のまま控訴審での裁判を続けるよりは、
控訴審で思い切って弁護士を変えるというのも
一つの方法ではあります。
しかし、裁判は、
一審での主張立証の方が重要なので、
最初に依頼するときの弁護士が大切です。


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