弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第12回
遺言で相続分を失ってしまったとしても

■質問
 
夫は、私宛てに、
遺産を全部相続させる
という遺言を書いていたのですが、
夫が亡くなってみると、その後、
先妻の子に遺産を全て相続させる
という遺言を書いていたようです。
遺言は、新しい方が優先するようですが、
私の相続分はないのでしょうか?
夫の遺産は、アパートと自宅と預金です。

■回答
 
質問の方の事情はわかりませんが、
高齢者の方が、
そのとき自分のそばにいてくれた人に対して
全ての遺産を与えるという遺言を
書くということがよくあります。

ご質問の相続人が妻と子というケースでは、
法定相続分は2分の1ずつとなり、
遺言がなければ、遺産を妻と子で
半分ずつ分けるということになるはずでした。
相続人が後妻と先妻の子でも、法定相続分は変わりません。

遺言では、どの財産を誰に相続させるか
決めることもできますが、
質問のように法定相続分を超えて、
相続させることもできます。
しかし、配偶者(妻又は夫)や子、
直系尊属(亡くなった方の両親)には、
遺留分という権利(民法1028条)があり、
たとえ相続分を失うような遺言が書かれていたとしても、
これらの相続人には、
遺産の一定割合を請求する権利があるのです。
これを遺留分減殺請求権(民法1031条)といいます。

兄弟姉妹が相続人となる場合もありますが、
兄弟姉妹には、遺留分はありません。
だから、遺言を書かれてしまうと、
兄弟姉妹は、遺産に対して何の請求もすることができません。
遺留分の割合は、妻や子は、2分の1で、
直系尊属のみが相続人の場合は3分の1です。
したがって、妻であるあなたのケースでは、
法定相続分の2分の1の2分の1である4分の1を
遺留分として請求できることとなります。

そこで、お子さんに対し、遺留分の減殺請求をすれば、
自宅、アパート、預金の4分の1を
あなたのものにすることができます。
ただ、自宅やアパートを共有にしておくと、
今後の利用関係が面倒になりますから、
遺留分減殺請求権を行使した後で、
4分の1相当額の現金をもらうか、
遺産を売却して4分の1と4分の3に分ける
などの話し合いをした方がよいと考えます。


←前回記事へ

2004年11月18日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ