弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第23回
相続税対策の悲劇

前回、借金をしてマンションなど
相続税法上評価を低くする資産を取得して、
課税される相続財産の額を減らすというのが
借金による相続税対策だということを説明しました。

しかし、この方法は、
マンションなどの資産が、値下がりせず、
賃料により、借金の返済を
約束どおりにしていけるということが
前提となっています。
何だか、いつもと同じ話になって来ました。

この相続税対策も、
右肩上り経済及び土地は値下がりしないという
土地神話に支えられてきたのです。

ところが、バブル経済崩壊後、
肝心のマンションなどの資産の価格は値下がりし、
賃料も当初予定していた
借金の返済ができないくらい値下がりしました。

借金を返済できなければ、
銀行からマンションの売却を迫られます。
マンションは1億円で建てたものの、
売却を迫られたときには、
半額になっているかもしれません。
すると、マンションを売却しても、
前回の例で言うと、
5000万円の借金が残ってしまいます。

結局、5000万円の借金の返済のために、
5000万円相当額の財産を
売却しなければならない
ということになってしまうのです。

元々は、800万円の相続税のために、
はじめた相続税対策ですが、
5000万円の財産を失うこととなり、
相続により取得できたはずの4200万円も
相続できなくなることとなってしまいました。

バブル経済崩壊後は、
このようなケースがたくさんあります。
不動産屋さんは、軽く、相続税対策になるから、
マンションを建築しませんかなどというセールストークで
借金を勧めてきます。

相続税対策のための借金は、
何年後の相続を想定するか、
そのときに、土地や賃料はどうなっているのか、
金利は上がっているのか、下がっているのか、
万が一、土地や賃料が下がった場合、
どうやって借金を返済するのか、など
いろいろシミュレーションをして
よく考えてからするようにしてください。

そうでないと、
相続税対策の借金のために、
自宅が競売にかかるとか、
自己破産しなければならない
ということにもなりかねません。

そのときになって、
相続税対策を勧めた不動産屋さんや
銀行などを訴えてみても、
全く勝てないとは言いませんが、
なかなか勝つのは難しいです。

今年の連載はこれで終わりです。
みなさん、よいお年をお迎えください。
では、また来年!


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2004年12月28日(火)

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