弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第30回
相手が倒産すると元本保証でも

前回、法律上、全額支払義務のあることを
元本保証と言っていると説明しました。

しかし、相手に全額支払う資力がない場合、
いくら元本保証をしてもらっていても、
全額支払ってもらうことができません。
これが、倒産です。

倒産の典型的なケースである破産の場合で説明すると、
会社が破産した場合には、
会社の資産を全額換金して現金にします。
そして、その現金を債権者に債権額に応じて配当する
ということとなります。

破産した会社が換金性のある資産を
どれくらい持っていたかにより、
配当が50%になったり、3%になったり、
0%即ち配当なしになったりします。

前回説明した元本保証商品でも、
相手が倒産すると
全額の返済が受けられなくなってしまうのです。

社債では、エンロンやマイカルの発行した社債が
全額返済を受けられなくなり、
国債でも、アルゼンチン債が
全額返済を受けられなくなりました。
銀行が倒産した場合にも、
預金は全額返済を受けられなくなるのが原則です。

しかし、銀行預金に関しては、
預金保険という保険に加入しているので、
万が一銀行が倒産した場合でも、
元本1000万円+金利までは、
預金保険の保険金により保護されています。

ペイオフが実施されると、
預金が1000万円+金利までしか
保護されないと言われているのは、
この預金保険の補償限度額のことを言っているのです。

ペイオフ実施と騒がれていますが、
平成8年までは、銀行預金は、
この預金保険による保護しか受けていませんでした。

ところが、バブル経済崩壊後、
一部銀行の倒産があり、
金融不安が起きる可能性があったことから、
平成8年に国が、銀行預金については、
預金保険の範囲を超えて全額保護していたのです。
国が、銀行預金について、
連帯保証をしていたようなものです。

銀行の不良債権処理の目処がついたと思われることから
国が銀行預金の連帯保証を止める
(平成8年以前の元の状態に戻す)
というのがペイオフの意味です。


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2005年1月25日(火)

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