弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第54回
成果主義報酬の誤り

前回述べたような経済状況がありますので、
企業にとって、
年功序列賃金を維持するのは至難の業ですから、
成果主義報酬を導入していかざるを得ません。

しかし、成果主義報酬制度を導入するにあたっては、
様々な困難な問題があり、
各企業で、トラブルとなっています。

成果主義報酬を採用する場合、
一番難しいのは、どういう成果に対し、
いくら給料を支払うかという問題です。

営業や商品開発については、
売上の何%と比較的成果を数字で表しやすいですが、
人事や総務、経理などの部署は
どのように貢献度を数字で表すかが難しくなります。

この営業でも、
地域割りや担当取引先の割り当てにより、
その人の能力による営業なのか、
もともと恵まれた担当だったのか
区別しなければなりません。

また、営業でも、
チームとしては、どう評価されるのか、
営業と商品開発では、
どちらの貢献度を高く見るのかなど、
成果を公平に判断しなければなりません。

自己目標の達成度で
成果を測るなどという制度は、
それが会社の利益とリンクしないのであれば、
全く無意味です。
売上あるいは利益が多くならなければ
従業員の配分を多くすることはできないからです。

ただ、全く従業員の数字に表れない努力を
考慮しないとなると、
会社全体の方向性を
危うくする可能性があります。

以上のように、成果主義報酬は、
最も基本である成果の評価を
公平・公正に行なうことが
一番難しいというところに問題があります。

その他にも、
成果主義報酬を取るに当たっては、
会社の売上における従業員側と
経営者側の分配率を定めること、
経営者側も成果報酬とすること、
各部署への配転について
従業員の意向をある程度
反映させることなどが重要で、
これらをきちんとしない場合は、
従業員の不公平、不公正感が強くなり、
仕事に対するモチベーションを
維持できなくなります。

成果主義報酬の誤りは、経営者側が、
上記さまざまな条件を明確にしていない
というところもありますが、
実は賃下げのためにリストラの手段として
導入していることを隠していることにあります。

次回に続きます。


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2005年4月19日(火)

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