弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第55回
成果主義報酬はリストラの手段

成果主義報酬の問題を
ややこしくしているのは、
成果主義報酬を
会社の業績が悪化しつつある局面で
導入していることです。

成果主義報酬は、成果、
即ち、会社の利益に連動するのが基本です。
したがって、会社の業績が
拡大しているときに導入すれば、
大抵の従業員の給料は増加していくはずです。
高度成長期に成果主義を導入したら、
世代の対立という問題は生じたでしょうが、
多くの従業員の給料が上がっていったはずなので、
今ほど成果主義を
問題にされなかったかもしれません。

しかし、逆に、
会社の業績が悪化しつつある場面で導入すれば、
多くの従業員の給料も
それに応じて減少していくことになります。

成果主義報酬を導入した途端に、
給料が上がらず却って下がって行ってしまうのでは、
仮に、成果主義報酬が公平・公正だとしても、
従業員としては、感情的に納得できず
モチベーションが上がらないのは当然です。

通常の成果主義報酬制度では、
前回説明したような点で、
公平・公正になってないことも多いので、
余計に従業員から反発を生む結果となります。

これらの問題は、
経営者側が、成果主義の名の下に、
賃下げというリストラを
行なおうとしたことから生じています。

業績悪化時に
成果主義報酬を導入する場合には、
従業員と経営者側で、
過去何年かの業績を基に、
従業員への労働分配率、経営者側への分配率が
どうなっているのか、数字を出して、
そもそも賃下げが必要であることを、
従業員と経営者側が双方納得することが大切です。
また、業績悪化に対する経営者側の責任を
明らかにすることも必要でしょう。

経営者側の放漫経営によって
業績が悪化したにもかかわらず、
経営者側が責任を取らず、
従業員が一方的に賃下げをされるのでは、
従業員が納得しないのは当然です。

会社の倒産という最悪の事態を考えて、
それでも、一時的な賃下げが
必要になるケースもあります。

これら業績悪化原因、
それに対する責任を明らかにし、
賃下げが必要であれば賃下げした後に、
業績がどれくらい回復した場合
どれくらい賃金を上げられるのかということを
労使双方で納得した上で、
成果主義報酬を導入しないと、
成果主義報酬導入はうまく行きません。


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2005年4月21日(木)

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