弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第76回
若貴問題と遺言書

テレビで毎日のように取り上げられた
双子山親方(元貴乃花)の相続・遺産分割問題は、
元若乃花(花田勝氏)が相続放棄をして、
一応解決したようです。

詳しい事情はもちろんわかりませんが、
この問題で、遺言書は出てきませんでした。
週刊誌の見出しでは、
「遺言ビデオ」の存在を指摘されていましたが、
そういうものがあったのかもわかりません。

ちなみに、遺言ビデオは、
法律上、遺言として無効です。
遺言書がないことと同じになります。

遺言ビデオが出てきた場合には、
そのビデオに映っている故人の意思を
相続人が酌んで遺産分割を行なうのか、
法的に無効なのだから故人の意思など無視して、
それぞれ自分の相続分を主張して
遺産分割をするという方法になります。

今回、若貴問題を取り上げたのは、
遺言書を書いておかないと、自分の死後、
子供たちが相続・遺産分割を巡って
揉める可能性があるということを言いたいためです。

自分が生きているときには
仲の良い兄弟でも、
自分が亡くなったときには、
遺産分割をきっかけに
関係が悪化するかもしれません。

法律どおり、
2人の子供に半分ずつあげるというのであれば、
遺言は必要ないかもしれません。
しかし、若貴のケースのように、
一方に事業を承継させる場合には、
事業を承継する子に
事業に必要な資産を相続させなければなりません。

本当のことはわかりませんが、
生前、事業を承継しない子に
相続放棄することを約束させたとしても、
自分が死んだ後に、
本当に放棄するかどうかはわかりません。

弁護士として、
このようなケースについて、
事前に相談を受けていたならば、
以下のようなアドバイスをします。

「まず、事業を承継する子に
 遺産の全部を相続させる旨の遺言書を書いてください。

 遺言書を書いたとしても、
 他方の子に遺留分が残ってしまうので、
 自分が生きている間に他方の子と話し合って、
 遺留分の放棄を了承してもらってください。

 他方の子が了承したら、
 相続開始前の遺留分の放棄は
 家庭裁判所の許可が必要ですので、
 家庭裁判所の許可を得る手続を取ります。」

若貴問題は、相撲部屋の承継という
特殊な世界の話のように感じますが、
会社などの事業承継をさせるときにも
同じ問題が生じます。


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2005年7月12日(火)

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