弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第82回
保証責任を裁判で争うには

前回から、勝手に保証人に
されてしまったときの話をしています。

勝手に保証人にされた場合には
責任を負いません。
しかし、実際の裁判では、
勝手に保証人とされたことを
証明することは簡単ではありません。

勝手に、署名捺印されたのだから、
署名の筆跡は違うはずです。
そこで、自分が過去に署名した文書を
証拠として提出すれば立証することが可能です。

しかし、筆跡は真似されると意外と難しいのです。
筆跡が違うことが立証できたとしても、
実印などの印鑑も盗用されている場合には、
問題があります。

というのは、法律上、
その人の印鑑が押されている場合には、
その人の承諾に基づいて
印鑑が押されたと推定されるからです。

例えば、保証人欄に
「高島」の印鑑が押されていたとします。
この印鑑が、実印でもなければ、
自分の持っている印鑑でもなければ、
勝手にされたとして
保証人の責任を負うことはありません。

しかし、僕の実印が押された場合、
法律の規定により、
署名が他人によってなされても
僕の意思に基づいて
署名捺印がなされたと推定されてしまうのです。

そこで、裁判では、
1.誰が盗用したか、
2.印鑑はどこに保管していたか、
3.印鑑が利用されたときのアリバイ、
4.誰が印鑑証明書の交付を受けたか、
5.盗用者との関係などにより、
印鑑が勝手に利用されたことを
主張立証しなければなりません。

印鑑の盗用者が逃げてしまっている場合や
盗用者が責任を
こちらに押し付けてくるような場合には、
これらを立証するのは
なかなか簡単なことではありません。

しかし、必ず敗訴するわけでもないので、
争う価値は十分あると考えます。


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2005年8月2日(火)

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