弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第98回
どちらも証明できない

弁護士の仕事として
依頼を受けることが多いのは、
やはり何と言っても裁判です。

法律相談では、
当事者間で発生したトラブルについて、
裁判でどうなるのか見通しを立ててから、
どう戦うのかアドバイスをすることとなります。

裁判での見通しを立てるには、
法律問題ではどちらの主張が通るのか、
証拠の問題ではどちらの主張が通るのか
という2つの問題について、
考える必要があります。

例えば、戸籍上、
籍を入れていない内縁の妻には
相続権はありません。
ただ、それまで内縁の夫と住んでいた
家への居住権は認められます。
これは、法律問題です。

次に、その女性が内縁の夫の死亡後に
夫名義のそれまで住んでいた家への居住権を
主張するために、
証拠上、内縁の妻と言える必要があります。
これが証拠の問題です。

ずっと、いっしょに住んでおり、
住民票もその家のところにあるというのであれば、
内縁の妻と認められやすいでしょう。

しかし、別なところに住民票があって、
家の中には女性の日常生活に必要な
洋服や家財道具などはなかったということとなれば、
なかなか同棲していたことを
証明できないと思います。

裁判では、法律の問題の他に、
証明という問題が重要です。

裁判では、お互いに主張を述べて、
それぞれ自分の主張を証明して行こうとします。
しかし、お互い自分の主張を証明しようとしても、
両方とも証明できない場合があります。

裁判では、このような場合に、
どちらも証明できないのだから、
引き分けとすることはしません。

どうなるのかについては、
次回に説明します。


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2005年10月4日(火)

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