弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第112回
国や地方が責任を負えばいいのか?

トラブルや事故、
被害といったニュースがあると、
テレビのコメンテイターは、
気軽に国や都道府県などの地方自治体が
責任を負えばよいというコメントを出します。

みなさんも、
国や地方自治体が責任を負えばよいというと、
何か被害者のためになる、あるいは、
世の中のためになるという気がしませんか?

しかし、本当に、国や地方自治体が
何でも責任を負えばよいのでしょうか?

国や地方公共団体というと、
みなさんとは別な存在、
みなさんとは対立する存在だと考えていませんか?

確かに、過去の歴史において、
国や地方公共団体は、
国民や市民の人権を侵害するおそれのある存在で、
国民や市民と敵対する関係にありました。
もちろん、今でも、そのおそれはあります。

しかし、よく考えてみてください。
国や地方公共団体は、
国民から切り離された存在ではありません。
国や地方公共団体の財産は、
国民の財産ですし、国や地方公共団体の収入は、
みなさんからの税金です。

国や地方公共団体が責任を負うということは、
別に、国会議員や大臣や官僚が自腹を切って
お金を払うわけではありません。
みなさんの税金から支払われるだけなのです。

何か、事故があったり、
トラブルがあったり、被害があったときに、
国や地方が責任を負えばよいと言うことは、
実は、単にみなさんの税金で払えばよいと
言っているようなものなのです。

この辺のことを明確にするために、
テレビのコメンテイターや評論家の人たちには、
安易に国や地方が責任を負えばよいなどと言わずに、
税金で支払えばよいと言ってもらいたいものです。

そうすれば、一次的には誰か民間で負担できないのか、
どうしても民間で負担できない事情がある場合に、
それは税金で出すべきなのか、
それとも諦めてもらうべきなのかという
合理的な議論になると思うのです。

何でも国や地方の責任
(税金で解決しろ)なんて言っているうちは、
税金をどんどん増やさなければならないし、
公務員は減らせない
ということになるのではないでしょうか?


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2005年11月24日(木)

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