弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第114回
経営権争いの原因は?

会社内で、どちらが会社の経営権を取得するか、
という経営権争いがなされる場合があります。

ドラマでは次期社長は専務か常務かといって、
会社内で派閥争いをしているのが通常です。
そして、これらの次期社長候補が
大株主や金融機関などの信任を得ようと
争いが展開されて行きます。

しかし、実際のケースでは、経営権争いは、
大企業における派閥抗争(出世争い)よりも、
中小企業における同族の争いの方が多いです。
特に弁護士の所に相談されるケースは、
このケースがほとんどです。
具体的には、次のようなケースで争いが生じます。

会社を設立し成功を収めた創業者社長がいます。
社長には3人の子がいて、
社長は長男に会社を継がせようとしていました。

社長は、自分の子供たちに限って
相続争いや経営権争いをするなど
夢にも思っていなかったため
遺言など書きませんでした。

ところが、実際に社長が亡くなってみると、
遺産分割協議の中で、長男だけでなく、
次男や三男が他の財産よりも
会社の株を欲しいと主張するのです。

遺産の中で、一番大きな財産が、
不動産などの資産を持ち、
毎年収益を上げる会社という場合、
その株を相続人の誰が取得するのかは問題です。

会社で権力を持っているのは
社長(代表取締役)ですが、
その代表取締役は、
取締役の過半数の賛成で選任され、
その取締役は株主総会の過半数の賛成で選任されます。
要するに、会社を支配するには、
会社の株の過半数を得ればよいのです。

そこで、会社の株の過半数の取得を目指して、
相続人は、遺産分割の話し合いで
争うこととなるのです。

もし、法定相続分どおり、
3兄弟が3分の1ずつ会社の株式を
取得することとなると、
創業者社長の思惑通り、
長男が社長になれるとは限りません。

仮に、社長になったとしても、
他の2人が手を組めば、
長男は社長からいつでも下ろされるおそれがあります。

以上のように、同族会社の経営権争いは、
相続が原因で、相続人のうち誰が
会社(株式)を支配するかという形で
争われることとなるのです。


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2005年12月1日(木)

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