弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第138回
住友信託vs三菱UFJ

みなさん、相手方が契約に違反すれば、
それを差し止めることができる、
あるいは、それによって発生した損害は
全て相手に賠償請求ができると思っているのではないでしょうか?

そういう場合もありますが、そうでない場合もあるんです。
それを法律の専門家ではない一般のみなさんに教えてくれたのが、
住友信託銀行とUFJホールディングス
(現三菱UFJフィナンシャルグループ)の訴訟です。

事案を説明すると、まず、
住友信託銀行とUFJが
住友信託銀行とUFJ信託銀行との統合を協議して
契約内容について合意ができたら統合するという契約をしました。
契約では、住友信託銀行に、
UFJと統合交渉を独占的に行なえる
独占交渉権が認められており、
UFJは他の銀行と経営統合の交渉を行ってはいけない
という条項があったのです。

しかし、UFJは、その契約に違反して、
東京三菱と信託部門の統合交渉を行い、
住友信託銀行と交渉をすることをやめてしまったのです。
そこで、約束が違うと怒った住友信託銀行が
UFJと東京三菱との
信託部門の統合交渉の差止請求を行ったのが、
第一ラウンドです。
1審の東京地方裁判所は統合交渉の差止めを認めましたが、
2審の東京高等裁判所は統合交渉の差止めを認めず、
最高裁判所もこれを認めなかったので、
UFJと東京三菱は、無事、
経営統合をすることができたのです。

みなさんの感覚ですと、契約違反なのだから、
1審の裁判所の判断の方が正しいと思われるかもしれません。
しかし、法律の世界では、
むしろ1審裁判所が差止めを認めた方が驚きでした。
というのは、住友信託銀行の持つ権利は、
経営統合ができる権利でなく、
独占的に交渉できる権利だったからです。


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2006年3月14日(火)

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