弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第139回
住友信託vs三菱UFJ Part2

前回に引き続き、
住友信託銀行がUFJと信託部門の統合に
独占的交渉権があったにもかかわらず、
UFJが契約に違反して
東京三菱と統合交渉しようとしたことを
差し止めようとしたけれども、
認められなかったことについてお話します。

前回の最後でお話したとおり、
住友信託に約束された権利は、独占的に交渉できる権利です。
交渉する権利ですから、
単に交渉する機会を与えればよく、
交渉した結果、経営統合の条件がまとまらなくてもよいのです。
しかも、経営統合について、
UFJは、もっとよい相手を見つけたので、
住友信託と経営統合する気持ちがないのですから、
契約にあるからといって
無理に経営統合について交渉させたところで、意味がありません。
もともと、住友信託銀行が約束された権利は、
その程度だったのです。

それから、法律の世界では、契約違反などは、
原則として、損害賠償で解決し、
差止めを認められる場合というのは限られています。
これらのことから、法律家の間では、
独占的交渉権のような中身の弱い権利に、
UFJと東京三菱とで交渉することの差止まで
認められないのではないかという考え方が一般的だったと思います。
それにもかかわらず、1審では予想に反して、
差止めが認められたので、驚いたわけです。
ただ、2審では差止めが認められず、
最終的に最高裁でも差止めは認められず、
法律の考え方の常識の範囲に納まりました。

しかし、差止請求が認められないとしても、
契約違反をしたのですから、
ノーペナルティというわけにはいきません。
そこで、住友信託銀行も、UFJ相手に、
契約違反を理由に損害賠償請求をしたのです。

ところが・・・。


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2006年3月16日(木)

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