弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第143回
子供のいない人は奥さんのために

前回お話した理由から、
少しでも財産がある人は、遺言を書くことをお勧めします。
遺言はいろいろなケースで必要なので、
遺言を書かないとどうなるか
ご自分で考えたり、相談したりして、
遺言のことを考えたらよいと思います。

今回は、特に、書く必要があると思われる人についてお話します。
子供のいない男性で、奥さんのいる方は、
遺言を書く必要があります。
子供がいない場合、法律(民法)によれば、
遺産は、奥さんに3分の2、
男性のご両親がご健在ならご両親に3分の1、
ご両親がいない場合は、遺産は、奥さんに4分の3、
ご兄弟(姉妹)に4分の1となります。
男女平等になり、家制度が廃止されたとはいえ、
未だに、〜家の財産は、〜家のものという考え方もありますし、
嫁と舅・姑・小姑などの関係から、
ご両親やご兄弟から遺産を多く欲しいと言われたときに、
奥さんが十分に権利主張をできない可能性があります。

それだけではありません。
普通の方は、遺産が住んでいる家と預金しかない
ということも多いと思います。
しかし、そういうケースで、
ご兄弟から、4分の1が法律上の相続分だからといって、
遺産分割を請求されたらどうでしょうか?
(ご両親は亡くなっていることとします。)
奥さんは、預金が相当たくさんない限り、
遺産分割のために住み慣れた家を
売らなければならないことになってしまいます。
あなたは、長年連れ添った自分の伴侶に、
そのような思いをさせてもよいのですか?
そうさせないためには、
奥さんに、家や預金その他全ての財産を相続させる
という遺言書を書いておく必要があるのです。

なお、奥さんとご両親が相続人になるケースでは、
奥さんに全て相続させるという遺言を書いても、
ご両親に遺留分という権利があって、
3分の1の3分の1、
即ち9分の1の遺産を請求する権利が残りますので、
遺産の状況によっては、
ご両親に遺留分の放棄をしてもらうなどの手続が必要となります。
兄弟姉妹には遺留分はないので、この点が異なります。


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2006年3月30日(木)

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