弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第162回
土地の値段はどれが正しいか?

土地や借地権の
売買のときはもちろんのこと、
相続における遺産分割や
離婚の際の財産分与、
借金の整理や会社の買収など
土地が絡む事件を扱うときに、
よく依頼者から、
土地はいくらが
「正しい値段なのですか?」と尋ねられます。

土地の価格には、公的なもので、
固定資産税評価額、路線価、公示地価
の三つがあり、その他に、
時価や取引相場などという言葉が使われます。
鑑定評価額というのもあります。
この中で、
時価が土地の実際の価値を表す
正しい評価額ということとなります。

固定資産税評価額は、
地方自治体が
固定資産税をかけるための評価額で、
時価の約7割と言われています。

路線価は、
国が相続税をかけるときのための
評価額で時価の約8割と言われています。

公示地価は、
国が発表している時価に
近い価格ですが、
国が不動産鑑定士に依頼して
調査した時点と
時間的なずれがあるので、
値上がり、値下がりなど
価格が動いているときには、
時価と差が出てきてしまいます。

鑑定評価額というのは、
不動産鑑定の
専門家である不動産鑑定士が、
公示地価などの公的な価格や
近隣の取引事例や
賃料の利回りなどを
総合的に考慮して、
鑑定した価格です。
専門家が決めたのだから、
正しい価格と皆さんが思うかもしれません。

しかし、期待利回りを
少しいじっただけで
価格が動いたりしますし、
鑑定を依頼した依頼主の意向で
価格が変動することもあります。
裁判で、価格を決める際には、
この鑑定評価額に
よらざるを得ませんが、
鑑定評価額で
実際に売れるのかは、
買主を探してみないとわかりません。

取引相場というのは、
周りの取引事例や取引希望額から、
おおよそ売れるだろうという
見込みの額で、時価に近いです。
土地の場合、株と違って、
同時期に同じ物件が
多数取引されるとは限らないので、
その正しい価格は
なかなか一義的には決まらないのです。
その株だって
価格は毎日動いていますから、
どれが正しい価格はわかりませんもんね。

だから、土地の値段は、
公示地価や路線価、
固定資産税評価額などの
公的機関が出した価格と
不動業者に近隣取引事例や
賃料などを聞いて、
それぞれが、その目的によって
どれくらいなら手を打ってよいか
ということを考えて決める他ないのです。


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2006年6月8日(木)

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