弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第185回
取締役と従業員の違い

最近は、会社に入って、
役員や社長を目指している人は
少なくなっていると聞きます。
しかし、新入社員は会社のことは
ほとんど知らないに等しいのですから、
会社に入ってから、何年も経って、
会社の仕組みや役員の待遇や権限を知れば、
役員になりたいと思うようになると思います。

また、自分の会社を作って起業する人は、
嫌でも、自分で役員や社長になるわけです。
しかも、社長になれば、
役員を雇うことになります。
取締役は、本来は、
株主から依頼を受けて
社長である代表取締役を監視するのがその役目です。

しかし、実際は、
取締役は、代表取締役である社長から選ばれて、
自分の担当分野の責任者として
業務を行なうことが役目となっています。
そういう意味では、
取締役と従業員に違いはありません。
最近、上場企業では、
取締役と区別して、
業務執行役員という役職を
設けているのはそのためです。  
ただ、従業員と取締役とは、
法律上の取り扱いが違うので、
その説明をします。

従業員は、原則として
定年まで勤務することができます。
しかし、取締役は、原則2年です。
株主総会で選任されれば、
また2年ということとなります。
なお、この取締役の任期については、
株式の譲渡に
制限がついている中小企業などでは、
2年でなく、10年までの
好きな期間を定めることができます。
従業員は、労働基準法などで守られますが、
取締役は、労働基準法などで守られません。
従業員は、給料や退職金について
会社に規定があれば、
支払われますが、
取締役については、
原則として株主総会での決議が必要になります。
会社が違法な行為を行なったときには、
余程のことがなければ
従業員個人の責任は追及されませんが、
取締役は、
株主代表訴訟により訴えられる可能性があります。

やはり、あまり役員にはなりたくないですか?
経営者側からすると、
従業員だと給料や勤務時間などの
雇用管理が面倒なので、
取締役にしておく会社もあるようです。


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2006年8月29日(火)

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