弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第186回
取締役は自由に解任できるか?

取締役として雇ったものの、
期待した能力を発揮できない、
あるいは、経営権を握ろうと
クーデターを画策しているなど、
社長から、取締役を解任できないか
という相談を受けることがあります。
会社法では、何と、
取締役は、いつでも株主総会で
解任することができると定めてあります。
ということは、株主総会を開催して、
決議を取れば、
いつでも自分の意に沿わない取締役を
辞めさせることができるのです。

上場企業の場合、
株主総会を開催するには
費用や労力がかかるので、
定時株主総会以外で、
取締役を解任するのは
なかなか難しいかもしれません。 
これに対し、
社長が株式の過半数を支配しているオーナー企業では、
取締役を自由に辞めさせることができることとなります。
取締役の解任は、
取締役が違法な行為をしてもしなくても、
株主総会で自由に決められるとすると、
ますます、取締役なんかなりたくない人が増えそうです。

しかし、法律は、
そこまで取締役の地位を
軽く扱っているわけではありません。
取締役の解任自体は、
株主総会で自由にできるのですが、
株主総会が取締役を解任する際に、
合理的な理由がなければ、
取締役に対して、
損害賠償をする必要があります。
この損害賠償額は、一般的には、
残りの任期期間の
取締役の報酬と言われています。
だから、任期途中で
いきなり取締役を解任されたとしても、
任期期間満了までの収入は確保されるのです。
残任期が長いほど、
解任により補償される金額は
多いということとなります。

もちろん、取締役が違法行為を行なって
解任される場合には、
解任に合理的な理由があることとなりますから、
いくら任期の残りが長いとしても、
会社から何の賠償も補償もしてもらえません。


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2006年8月31日(木)

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