弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第228回
借金のある相続にはご注意

相続は、争族と言われるくらいですから、
みなさんにも親子兄弟が相争って大変
というイメージがあるかもしれません。
しかし、実際は相続遺産について
特に争うことなく
当事者間で簡単に済ませるケースも多いです。

そういうケースでは、
意外に、兄弟の1人に
全部あるいはほとんどの遺産を渡してしまう内容の
遺産分割が多いようです。
世の中、欲のない人も結構いるんですね。
そういう人たちは、
自分たちは遺産なんか当てにしないで
自分たちの力で生活できているからそれでよい
という考えなのだと思います。
それはそれで、1つの考え方・生き方なので、
僕がとやかく言う問題ではありません。
しかし、遺産に借金があるときには、
安易に、自分は相続分0、
あるいは、はんこ代で100万円などという
全体の遺産額からすれば
少額しか相続をしないこととすると、
後でひどい目に遭うことがあります。
遺産を要らないと言ったのに、
ひどい目に遭うという
不合理なことがあるのかと言えば、あるのです。

具体例で説明します。
お父さんが会社を経営していました。
借金が1億円あり、
お父さんは1億円の連帯保証をしていました。
自宅は約1億円で、
借金の担保に入っていました。
相続人は、兄と妹の2人兄弟でした。
会社はお兄さんが継ぐこととなり、
自宅も全部お兄さんが相続しました。
借金は、当然お兄さんが返していくことになっています。
妹は預金から100万円だけ相続しました。
こういう遺産分割はよくありそうです。

しかし、このような遺産分割には
危険があるのです。
会社の経営が順調で、
借金がうまく返済されれば問題ありません。
しかし、会社経営が破綻し、
借金が返済できなくなってしまったらどうでしょう。
銀行は、まず、自宅を売却して、
借金の返済に充てようとします。
しかし、このときに自宅が値下がりして、
7000万円でしか売れない可能性があります。
自宅が7000万円でしか売れなければ、
借金は3000万円残ってしまいます。

何と、このようなときに、
銀行は妹さんに3000万円(少なくとも1500万円)を
請求できてしまうのです。
どうしてこうなるかということは、
次回お話します。


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2007年1月30日(火)

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